2022.01.04 【部品メーカートップインタビュー】22年の展望と経営戦略タムラ製作所 浅田昌弘社長

浅田 社長

グループ全体で技術開発推進

―ここ最近の事業動向は。

 浅田昌弘社長 昨年は、受注、売り上げは相当伸びても、原材料費の高騰で利益面は厳しい年だった。その前から、ほぼ全ての事業分野で市場が立ち上がってきて、受注残は大きく積み上がっている。

 電子部品関連では、世界的な巣ごもり需要などで追い風の電動工具やエアコン、産業機械、風力発電向けなどが堅調に推移した。ただ、利益面は低迷している。また、自動販売機向けも取引先の設備投資抑制で厳しい。

 情報機器関連も、五輪関連で期待もあった音声卓などがあいにく伸び悩んだ。ネットワーク化対応などの開発も進めている。

 電子化学実装関連は、銀やスズの高騰の価格転嫁で売り上げは増加した。もっとも、値上げが追い付かない面がある。実装装置は、日系車載メーカーの需要が戻って回復基調にある。

 素材高を踏まえた価格改定交渉の取り組みも進めている。

 ―業界としての展望は。

 浅田社長 市況全体としての回復基調は続くだろう。

 全体的なトレンドとしては、電子部品でいえばカーボンニュートラルで、当社のトランス・リアクターがエネルギー変換の基幹部品として伸びるとみる。風力発電や送配電など「高信頼」「高効率」の技術で脱炭素に貢献することができる。特に、高周波化対応が求められる。

 実装装置は、日系車載メーカー向けを中心に堅調。情報機器は、キー局の社屋建て替えに伴う放送機器の売り上げ拡大を、来年度以降に見込んでいる。

 ただ、半導体不足の先行きはまだ見えない。原材料の高騰も高止まりというより、一部ではさらに高騰する可能性がある。

 ―そうした中での戦略は。

 浅田社長 グループ全体で技術開発に取り組んでいきたい。例えば、高周波対応でいえばダストコアや高耐熱接合材、ゲートドライバーモジュールなどを磨いていく。

 地域別に見ると、国内では坂戸工場(埼玉県坂戸市)や、中国の広東省佛山市の工場などが順調に生産を始めている。グローバルな生産体制の構築が完了した。

 ただ、グローバル展開では、米国での浸透がまだ途上の段階にある。コロナで人の往来が難しい面もあるが、かねて課題になっているインド市場も開拓したい。間もなく、新しい中期経営計画が始まるが、そのあたりも柱になってくるだろう。

 部門のグループ内での位置付けについても将来の成長性などを考えつつ、最適な在り方について、判断していくことになるだろう。

 また、米中のデカップリングなども考えると、事業の継続性のためにも、地産地消を進めていく必要がある。

 ―ほかの成長分野は。

 浅田社長 期待する分野としては、当社からのカーブアウトで次世代パワー半導体(酸化ガリウム)開発を進めるベンチャー、ノベルクリスタルテクノロジー(ノベル社、埼玉県狭山市)との共同開発がある。ノベル社は製品化に向けて着実に進んでおり、昨年末にも進捗(しんちょく)が発表された。市場が本格化した際は共に大きく成長することを目指す。

 グループの光波(東京都練馬区)では、センサー技術を生かした見守りなどを進めている。そうして得られるデータの活用といった展開も考えられる。

 ―間もなく100周年ですね。

 浅田社長 変革しながら強靱(きょうじん)な企業体質をつくり、次の成長戦略を描くことが不可欠。2024年に迎える創業100周年と、その先のタムラを約束できる、サステナブルな企業価値を生み出す経営を目指す。働き方改革、スマートワークなどにも引き続き取り組む。