2022.02.01 東京都、グリーンファイナンス拡大へ官民連携ファンドを設立
クリーンエネルギー向け新電力ループ運営
東京都は、環境問題解決に寄与できる投資に資金提供するグリーンファイナンスを拡大させる一環として、官民連携ファンド「サステナブルエネルギーファンド」を今年度中に発足させる。運営事業者として再生可能エネルギー系新電力のLooop(ループ、東京都台東区)を選定した。都の資金を呼び水に、広く民間からも集めて100億円規模で運用する。国内の再エネ発電所や、蓄電池などのクリーンエネルギー拠点を対象に投資を進める。
都は2021年11月、改訂した「国際金融都市・東京」構想2・0を発表。国内の約1900兆円に上る個人金融資産などを強みとし、東京を、世界をリードする国際金融都市に発展させるための施策として3本の柱を掲げた。その筆頭が、グリーンファイナンスの拡大だ。
企業のESGの取り組みに関する情報プラットフォームの整備や、環境配慮型の事業に使途を絞った中小企業向けの融資「グリーンローン」の活性化などを対策として盛り込んだ。企業や自治体がグリーンボンド(環境債)を発行する際、必要となる第三者評価の取得費用を軽減させるため、環境省の支援分に上乗せする対策も21年度から始めている。
取引所などを整備してグリーンファイナンスの取り組みを進めた都市としては欧州のルクセンブルクやアジアのシンガポールなどが知られるという。
一方、東京の強みに、「東京には中小企業も多く、投資によって脱炭素化しなければならない事業を都市自体がまだ多く抱えている」(東京都)点などを挙げる。
構想を実現させるための目標として、国内で公募されたグリーンボンドについて、20年に0・8兆円だった発行額を25年には倍増となる1・6兆円、さらに30年には3兆円へと拡大することを明記した。
また、個人の金融資産をESG投資などに向けさせることも重要になる。都民の関心の高まり度合いを示す指標として、ESG投資に興味があるとアンケートに答える人の割合を30年には50%にまで上昇させたい考えだ。
こうした施策の一環で新設するファンドには、都が3月ごろに約10億円を出資する予定。ほかにも金融機関や再エネ関連事業会社など民間から出資を募り、100億円以上の規模を目標とする。15年間、運営を続ける。
東京都の黒澤宏明国際金融都市担当課長は「都の10億円を呼び水にして、それ以上の大きな額の資金を集め、民間のノウハウとリスク管理能力を生かしながら、都の政策を実現していく」と期待を込める。
投資は国内の太陽光や風力などの再エネ発電所建設、水素ステーション開設や大型の蓄電池設置といったクリーンエネルギー拠点の整備を対象とする。特にクリーンエネルギーに絞ったファンドは都としては初めてという。
都は、30年に都内から排出される温室効果ガスを00年比で半減させる「30年カーボンハーフ」をスローガンに掲げており、そのためには「再エネに加えて、クリーンエネルギー拠点の整備促進が欠かせない」(黒澤担当課長)。