2022.02.11 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<74>アフターコロナのDX&ローカル5Gを占う②
古代中国から日本へと伝わったとされる「占い」は、政(まつりごと)や戦(いくさ)には欠かせないものであったらしい。鎌倉時代の歴史書『吾妻(あずま)鏡』の中にも、占いを意味する「卜筮(ぼくぜい)」という言葉が随所に見られる。
例えば、源頼朝が挙兵するに当たり決行の日時を卜筮により8月17日・寅卯の刻に決めたと記されている。意思決定に必要なセンシング情報が希少であった時代には、占断結果も重要な情報の一つだったに違いない。
ところが、あまたの情報がリアルタイムに手に入る現在でも、占い師と顧問契約を結ぶ企業の経営者は少なくないと聞く。それは、不確実性の時代だからともいえるだろう。
将来予測は困難
昨今はデジタル化の進展でビジネスを取り巻く環境は急激に変化し、産業構造もすさまじい勢いで変わりつつある。さらにデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)によるビジネス変革も大きなうねりとなり迫ってきている。これに新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という予期せぬ事象も重なり、経営者が将来の予測をするのは非常に困難な状況であるのも事実だ。
そこで来るアフターコロナの時代に①テレワークやリモートワークがニューノーマル(新しい日常)になるのかどうか②4K/8K超高精細映像や仮想現実(VR)/拡張現実(AR)といった技術を活用したリアリティーのある仮想空間によるオンライン化は進展するのかどうか③5Gによる通信インフラの強化と整備が本格的に始まるのかどうか―を見ていきたい。
ベイズ統計学
鎌倉時代の陰陽師(おんみょうじ)によって行われていたような占法ではなく、人工知能(AI)の基盤にもなっている「ベイズ統計学」と呼ばれる推論を試行し、進めてみよう。
ベイズ統計学は、経験から導き出された(ある事象が起こるかもしれないという)事前の予測(確率)に、実際に起こった事象を加えることで事前の予測を更新し事後の確率として見通しを立て直す。これを繰り返し不確実な事象をより高度に予測する方法だ。経営やマーケティングなどにおいてもよく用いられる。
例えば、サイコロの目は、事前にどの目も出ていないときには、1の目が出る確率は6分の1であると予測するのが普通だ。仮に、1回目に1の目が出たとすると、次に再び1の目が出る確率は6分の1より低くなると予測するだろう。ところが、2回目も1の目が出たとすると「このサイコロはゆがんでいるのではないか」と疑うようになり、3回目に1の目が出る確率は、逆に6分の1より高くなると予測するようになる。
このように、事前の経験による主観的な予測に、事後の客観的に観測された新たな事象を加えることで次に起こる事象をより高い精度で予測するのがベイズ統計学の特徴だ。
それを踏まえて、まず①のテレワークやリモートワークがニューノーマルになるのかどうか--について考えてみたい。
ビフォアコロナ(コロナ前)に行っていた主観的な予測と、現時点までのウィズコロナの下で客観的に観測された事象から、アフターコロナ(コロナ後)に起こるかもしれない事象を予測していきたい。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉