2022.03.25 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<80>5G×ディープラーニング=DXになる①

 今年も新人教育の季節がやってきた。桜の開花とともに思い出すのが、まだ青かった頃に受けた新入社員教育のことだ。

 といっても、講話や訓話をしていた社長や役員の顔はほとんど思い出せない。ましてや話の内容はというと、全くと言ってよいほど覚えていない。はっきりと覚えているのは、配属された職場で講師をしてくれた先輩技術者たちの顔と講義内容だ。

 ちょうど、電話網がアナログからデジタルへ移行し始めた頃だった。網(ネットワーク)は「ノード(点)」と「エッジ(線)」から構成される。電話網の通信システムにおいてノードに当たるのが「交換機(電話局)」であり、エッジに当たるのが「回線(局間の光ファイバー、マイクロ波)」だ。

 当時、交換機のソフトウエア開発は、OS(オペレーティングシステム=基本ソフト)、呼処理(電話番号解析による回線接続)、運用(局データ管理、課金など)に分かれていた。そのため、職場での新人教育ではそれぞれの開発責任者が入れ代わり立ち代わり登壇し、技術などを説明してくれた。

DX:データ駆動型ビジネス変革による課題解決

 その光景は、今でも彼らの顔とともに鮮明に記憶している。同時に「よく分からなかった」という正直な印象が焼き付いている。なぜなら、教育内容はいずれも技術の専門的な話ばかりで、システム全体の中で個々の技術がどのような役割を果たしているのか--。全体を俯瞰(ふかん)するような話が少なかったことが原因だったからだと思う。

DX全体を俯瞰

 翻って、昨今のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)教育を見ると同じことが言えるのではないだろうか--。

 仮に、IoTや人工知能(AI)、第5世代移動通信規格5Gなどのデジタル技術の専門的な解説ばかりで、DX全体を俯瞰するような話が冒頭になければ、教育効果が半減するに違いない。新人が知りたいのは、技術の詳細ではなく、その技術を利活用して何ができるかだ。

 例えば「DXによるビジネス変革に『5Gの整備と利活用』がなぜ求められるのかを知りたい」とする。その回答が超高速無線通信の仕組みや基地局とコアネットワークのプロトコルといった開発者視点の解説ばかりだったとしたら、5G整備の必要性を推し量ることはできないだろう。

ユーザー視点

 つまり、DXにおける5Gの必要性を明らかにするには、DX社会の中核となるデータ駆動型ビジネスの実現に「IoT、AI、5Gはどのような役割を果たすのか?」という、ユーザー視点での解説が求められるわけだ。

 筆者は新人やユーザー向けDX教育において、IoT、AI、5Gの役割を次のように一言で述べるようにしている。

 DXでは「IoTが現実社会の課題に関するデータを集め、AIがデータを分析して解決のための判断結果を現実社会へ戻す」という流れを作り、その中で「5Gは現実社会(フィジカル)とデジタル空間(サイバー)の間で、データを回す役割を果たす」と言っている。

 本シリーズでは、なぜ今、典型的なDXである映像データ駆動型ビジネス変革に「5Gと深層学習(ディープラーニング)が必要なのか」について、新人でもふに落ちるような解説をしてみたい。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉