2022.04.29 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<85>5G×ディープラーニング=DXになる⑥

 筆者の大学生時代、工学部電気電子工学科には女子学生が皆無だった。3年前、同大学から講演の依頼をされた時、さすがに40年もたち男女雇用機会均等が浸透していると思いながら教壇に立ってみると、女子学生は一人だった。

 令和3年度内閣府委託調査「女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)によると、大学入学者に占める理工系分野の割合は一割程度、さらに工学分野における女性の比率は一割強だという。理工系分野における女性の割合は、依然として低い水準にあるらしい。

 一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)が理系・文系を問わず、あらゆる分野の企業で声高に叫ばれていることに違和感を覚えるのは筆者だけだろうか?

DX推進者が重要

 DXでは、ビジネス現場のビッグデータから課題を解決するための仮説を設定して検証する。したがって、従来のITシステム構築とは異なり、ベンダーやSIer(システムインテグレーター=システム構築企業)に丸投げというわけにはいかない。いわゆる共創が必要となる。

DXによるビジネス課題解決=協創

 その際、現場のビジネスと課題を知り尽くし、かつ課題解決に必要な現場のデータを把握している自社の「DX推進者」が重要な役割を担う。

 DX推進者のスキルには数学を駆使するデータサイエンスが必要となるが、統計学の入門知識さえあればディープラーニングをうまく活用して比較的容易に課題解決できるケースもある。文系分野でも統計学を学ぶ機会が増えている昨今では、文系のDX推進者もありなのではないかと思う。

 また、社内に散在するヒトやモノから画像データなどを収集しクラウドのディープラーニングへ転送するには、超高速な無線回線が必要となることは何度も言ってきた。仮に第5世代移動通信規格5GやWⅰ-Fi6を導入する場合、DX推進者は無線通信の入門知識も必要となるが、スマートフォンを自在に操る若い人なら理系に限らず興味を持ってくれると信じている。

 筆者は経営学部の特別講義で人工知能(AI)と5Gを含むDXを教えているのだが、簡単な統計と電波の話もしている。

 もちろん、数式は一切用いず「ディープラーニングと5Gがビジネスにどのようなインパクトを与えるのか?」という話の合間に、本連載で解説したようなビッグデータにおける有意な相関関係や、超高速な5Gを実現する高周波電波の特性など、例え話を交えて教えている。

真剣な女子学生

 学生の関心も高く、特に真剣なまなざしで受講している女子学生が多く目立つ。前述した内閣府委託調査によると、女性の理工学部志望者は、大学や自治体が開催している工作教室イベントへの参加など、理系的経験の多さと相関関係があるという。

 今後、DXを本格的に推進させるためには、文系のDX推進者育成が不可避になるだろう。スマホによる顔認識をはじめ、5Gとディープラーニングに対する興味を深める機会を増やし、学生のハートをつかむ必要がありそうだ。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉