2022.05.25 【次世代自動車用部品・材料特集】 世界の自動車市場、xEVシフトが加速メーカー各社、電動車事業を重視

 世界の自動車市場では、主要自動車メーカー各社のxEVシフトの加速や、xEVの中期販売目標引き上げなどの動きが顕著となっている。世界的なカーボンニュートラルニーズの高まりに伴い、各国のCO₂(二酸化炭素)排出規制強化やxEV重視の方針が一段と強まり、これに合わせて自動車各社の電動車事業重視の姿勢がより鮮明となっている。昨今の化石燃料価格高騰も、xEV市場には追い風。これらを見据え、主要電子部品メーカー各社も、xEV用電子部品・モジュールへの技術開発を一層加速させる。

 世界の自動車市場では、欧州や中国市場をはじめとする各エリアで、xEVシフト前倒しの機運が高まっている。ガソリン車の新車販売規制の動きは、2010年代後半以降、欧州が先行する形で、国別にさまざまな方針が打ち出されていたが、気候変動対策の重要性の高まりを背景に、20年から21年にかけて、さまざまな国や都市などによる新たな方針や目標の設定が相次いだ。

 これらを受けて、国内外の主要自動車メーカー各社も、20年以降、中長期計画の中で、xEVシフトの前倒しや、xEVの生産台数および販売台数の引き上げ、関連投資強化などの方針を打ち出している。同時に、米テスラをはじめとする米系EV専門メーカー、中国系EVメーカーやEV関連のスタートアップ企業等でも、販売目標の引き上げなどが順次、公表されている。

 日系自動車メーカーでは、トヨタ自動車が昨年12月、30年の全世界でのBEV(バッテリーEV)の販売目標を年間350万台へと大幅に引き上げる方針を発表した。これに合わせ、22年度から30年度までの9年間で、BEV関連に約4兆円の投資を行う計画。

 ホンダは今年4月に、30年までに全世界で30車種のEV新車を投入し、生産台数を年間200万台に引き上げると発表。日産自動車も昨年11月に、30年度までに15車種のEVを含む23車種の電動車を投入し、グローバルでの電動化比率50%以上を目指すとした。

 海外自動車メーカーでは、欧州系プレミアムカーメーカーなどを中心に、積極的な計画が公表されている。オランダのステランティスは今年3月、30年に欧州市場でのEV販売比率を100%に、米国市場でのEV販売比率を50%とする目標を発表した。さらに、25年には、大型バンタイプのFCV(燃料電池自動車)を米国で提供する計画。

 仏ルノーは昨年6月に、ルノー・ブランドの商品構成に占めるEV比率を30年に最大90%とする方針を公表した。独ⅤWグループは昨年7月、30年までにEVシェアを50%とするプランを発表。独ダイムラーAGは昨年7月に、30年までに全新車販売をBEVに切り替える方針を表明した。スウェーデンのボルボも昨年3月に、30年までに全ての新車をEVに切り替える計画を発表している。

 米系自動車メーカーも、先行するテスラを追撃すべく、主要各社がEV戦略強化の方針を発表しており、フォード・モーターは昨年11月に、23年末までに年間60万台のEVをグローバルで生産するという目標を発表した。このほか、米系の新興EVメーカーや新興EV商用車メーカーなどの台頭の動きも活発化している。

 世界最大のEV市場である中国では、必要最小限の機能で価格を低価格に抑えたマイクロEVに新規参入する新興企業も増加するなど、車両メーカー同士の競争が一段と活発化している。こうした中国系EVメーカーによる日本市場参入計画なども発表されている。

 xEVシフト加速の動きは、自動車1台当たりのカーエレクトロニクス需要を押し上げ、付加価値の高い車載用電子部品のポテンシャル増大につながるものとして期待されている。世界のEV市場は、25年ごろより成長の本格化が見込まれているが、昨今の世界的な原油価格高騰に伴うガソリン価格の値上がりが、業界全体のxEVシフトの速度をより速める可能性なども指摘されている。