2022.06.24 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<91>5GはVUCA時代を乗り切るビジネス基盤③

 観光地ににぎわいが戻ってきた。平日だというのに、JR北鎌倉駅の小さな臨時改札口には長蛇の列ができていた。

 三年ぶりのせいか、こけむす石畳は人のけがれを落とし切ったかのように清らかな光を放ち、小雨にけむる境内に咲くアジサイはこの世のものとは思えないほど美しい。

 アジサイにはさまざまな色がある。中でも、鮮やかな赤紫(マゼンタ)色のアジサイは、天然石「レピドライト」の輝きに似ている。レピドライトは紅雲母とも呼ばれ、ブラジルなどを産地とするパワーストーンであり「変革の石」として知られている。

ローカル5G(ビジネス変革の基礎)とビジネス変革パーパス

 このレピドライトを身に着け、例えば「現状を打破したい!」と願う。すると、常識や思い込みの枠から解放して恐れや不安を和らげ、変革の意志を促して新しい一歩を踏み出すパワーを与えてくれるという。

 前回述べたデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進してビジネスの変革を起こす〝パーパス〟にもパワーを与えてくれるかもしれない。

 避けられぬ少子高齢化による人手不足に加え、コロナ禍やウクライナ情勢の急変、さらには大地震や大水害によるサプライチェーンの寸断など、ヒトやモノの供給不足がいつ起きても不思議ではない時代になっている。

DXで現状打破

 不確実性極まりないVUCA時代の真っただ中で、われわれは今、DXによってこの現状を打破しようとしているといっても過言ではないだろう。

 ところが、中小企業どころか大企業においても、DXの推進はうまくいっていないと聞く。その理由の一つとして、5GやIoT、人工知能(AI)などのデジタル技術をうまく融合させ、ビジネスを一変させるようなキラーサービスがいまだ創出されていない状況があると思う。

 そこで、この現状を打破するためにまず何をすればよいのかを考えてみたい。

 仮に「ビジネスの現場をスマート化し、人手不足を解消する」という変革意義をパーパスとして掲げてみることにしよう。このパーパスを達成するには、現場に散在する多数のIoTデバイスによるデータ収集、ディープラーニングなどのAIによるデータ分析、ワイヤレス制御ロボットによる作業員の代替を模索していくことになる。

 この場合、ビジネス現場の無線化とデジタル化をすることが大前提となる。ただ、無線化といってもLANケーブルをWi-Fi6に替えるだけではダメだ。ビッグデータをAIへ転送する超高速性(eMBB)のみならず、IoTの多数同時接続性(mMTC)やロボット制御の超高信頼・低遅延(URLLC)も必要とされるからだ。さらに、電波の盗聴による情報漏えいリスクを回避するセキュアな無線通信も必要となる。

シナジー高める

 これら全てを具備したものがローカル5Gだ。ローカル5GはIoTやAI、ロボットとの相性が良く、シナジー(相乗効果)を高めることができる。

 逆の見方をするなら、ローカル5Gの導入を前提とすれば、「変革のパワー」となってビジネス現場ごとにIoTやAI、ロボットなどをうまく融合させたキラーサービスを創出しやすくなるといえる。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉