2022.07.08 【電子部品技術総合特集】5G用部品動向 端末世界需要右肩上がり 「ポスト5G」サービス波及
電子部品メーカー各社は、第5世代移動通信規格5Gの本格化に照準を合わせた技術開発に注力している。各社は、5Gスマートフォンや5G通信基地局に使用される電子部品開発を進めるとともに、5Gが創出する新たなソリューションサービス、さらに車載5Gなどをターゲットとした先行開発を推進し、先々のビジネス獲得を目指す。
5Gは、超高度情報社会に向けた次世代通信方式。超高速大容量、低遅延、多数同時接続などを特徴とし、スマホの高性能化をはじめ、さまざまな産業分野への波及が期待されている。
5Gの実用化は、先行していた海外市場に加え、日本でも2020年3月以降、主要通信キャリアが商用サービスを順次、スタート。その後も基地局整備に合わせ、カバーエリアを拡大させている。
スマホの世界出荷台数は、16年をピークに、17年以降は横ばいから漸減傾向だが、高性能な5G端末の世界需要は右肩上がりが継続している。スマホ全体に占める5G端末の構成比は、22年には5割を超える見通しで、今後も堅調な伸びが見込まれている。
現状の5G対応スマホは、Sub6(サブシックス)端末が主流で、ミリ波端末はフラッグシップモデルに限られるが、徐々に「28ギガヘルツ対応ミリ波端末」も市場投入されている。スマホ最大手の韓国サムスン電子のギャラクシー旗艦モデルをはじめ、米アップルが昨秋に発売したアイフォーン13でも、米国市場向け機種は28ギガヘルツに対応している(日本市場向け機種はミリ波非対応)。
既存の4Gと比較すると、5Gではより高い周波数で超高速通信を行うため、小型基地局を数多く設置する形でのエリアカバーが必須とされ、基地局の設置台数が大幅に増加する。
また、5G通信はスマホ技術の進化にとどまらず、5G通信の本格普及を契機とした「ポスト5G」としてのさらなる多様なサービスへの波及も想定される。5Gは同時多接続や低遅延などの特徴から、IoTの普及促進にも寄与する。さらに、5G技術は将来の完全自動運転車実現のための必須技術とされる。
回路部品 超小型チップ搭載率上昇
スマホでは、限られたスペースに多機能を搭載するため、高密度実装化が進展している。特に5Gスマホの実装密度は一層高まり、回路部品は超小型チップ部品の搭載率が上昇している。
高密度実装化を推進するため、小型で大容量な積層セラミックコンデンサー(MLCC)、小型で高耐電圧のチップ抵抗器の採用が増加し、0603サイズや0402サイズなどの超小型チップの搭載比率を上げる方向にある。
電源回路を省スペース化するため、パワーインダクターの小型化も進展。フェライト系から大電流対応で有利なメタル系の新製品開発が巻線、薄膜、積層の加工工法で活発化している。
5G基地局では、小型基地局(スモールセル)向けに、基地局部品の小型化が追求され、実装密度の向上に対処するための耐熱性、耐湿性、耐環境性も重視されている。
コンデンサーは、小型・大容量のMLCCやアルミ電解コンデンサーなどの開発が進み、低ESRを特徴とする導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーや、高い耐熱性能を備えた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーなどの開発が活発化している。
接続部品 インフラ用など開発活発
接続部品では、5Gスマホのアンテナ接続用のSub6対応コネクターなどの開発が進んでいるほか、5Gインフラ向けの高速伝送用コネクターや高速光コネクションなどの開発が活発。
通信インフラ関連では、56ギガbps/28ギガbpsなどの超高速伝送に対応のハイスピード対応コネクターなどの開発が進んでいる。
5G基地局向けコネクターでは、防水小型光インターフェースコネクターや、45ギガヘルツ対応高周波同軸コネクター、基地局で求められる放熱性向上に寄与するフローティングコネクターなどの開発および製品バラエティー拡充などが進んでいる。
5Gスマホ向けコネクターでは、12ギガヘルツ対応の優れた高周波特性を維持しつつ、超小型化を図った基板対基板コネクターなどが開発されている。ハイエンドの5Gスマホで求められる高密度化による内蔵用コネクターへのさらなる小型化要求に対応し、0.3ミリピッチ基板対基板コネクターなどの狭ピッチ基板対基板コネクターの開発や製品ラインアップ拡充も進んでいる。
同時に、これらの5Gスマホ内蔵コネクター技術の高度化に対応する特性を付与した素材開発も進展している。