2022.07.15 【 記録計・ロガー特集】IoT化で測定需要
記録計・データロガーは、電圧や電流、温度、流量、圧力などの情報を収集して記録する機器で、さまざまな生産現場や開発現場で使用されている。
近年、普及が進むIoTでは、製造拠点の各所にセンシングデバイスを配置し、大量のデータを多チャンネルでリアルタイム収集する。
集めたデータは生産効率の改善に用いられ、設備や機器の異常や劣化など多様な現象のデータを収録する記録計・ロガーの役割が期待されている。
無線通信に対応したタイプなら遠隔でロギングでき、記録に要する工数削減や省力・省人化に役立てることができる。
最近では、記録計やロガーのデータを使って、人工知能(AI)が生産設備劣化や製品品質の低下を判定するツールも登場している。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)によると、2019年度の記録計・データロガーを含む「測定用記録計・データ処理装置」の売上高は、前年度比9.6%減の45億円。20年度も新型コロナの影響で同13.7%減の39億円となった。シミュレーションを用いたMBD(モデルベース開発)の進展や測定器の記録機能充実も背景にある。
今後、自動車分野での大容量・長時間計測需要やAI活用に伴う学習データを記録するニーズが増加すると見て、21年度は同2.7%増の40億円を見込む。
チノーMD8000
無線で遠隔の温度監視、モニター視認性向上
チノーのリアルタイム無線ロガー「MZシリーズ」は、輸送時の万一のデータ欠損を防止する機能を備える。ワクチンなど医薬品物流で必要な厳格な温度管理の要求に応える。
ロガー(子機)は5万3000データを記録可能。無線通信が失敗してもロガー内のデータが補完して受信器(親機)に転送する。
ロガーは約1分間の電源バックアップ付きで、電池が切れてもその間に電池を交換すればデータ欠損が生じない。
変調方式の異なる2種の通信モードを用途ごとに切り替えられる。
常時監視用の長距離モードでは障害物があっても電波が届きやすいLoRa規格を採用した。60台のロガーを同時接続した場合、最短1分周期で各ロガーと順番に通信し、リアルタイムで温度が監視できる。医薬品輸送の場面で保冷バッグにロガーを入れて温度を記録するといったケースにも活用できる。
FSK(周波数偏移変調)方式の高速モードは、例えばトラックで配送中にロガーで温度を計測し、目的地に着いた時点でデータを集約するなどの使い方に適している。
監視機能付き無線ロガー「MD8000シリーズ ワイヤレスウォッチャ」は最大360台の送信機から送られるデータを計測・監視するモニタリングシステム。イーサネット接続と特定小電力無線を組み合わせて、広域エリアの収録データを一元管理できる。
送信機に1万6000データを保存できる内蔵メモリーを搭載し、通信障害時もデータ欠損リスクを軽減できる。
サーミスター温度センサー、温湿度センサー以外に熱電対や測温抵抗体、電圧接続にも対応する。
グラフィックモニター機能を追加して視認性を高めた。事務所や倉庫エリアなど、各レイアウト上に温度などの計測データを表示できる。
日報・月報の作成機能も新たに搭載した。グループごとに用意した3種類の出力フォーマットを選択して簡単に日報・月報が作成できる。
同社のサーモグラフィーカメラと組み合わせて、バイオマスや石炭など燃料の保管場所での発火監視用途でのニーズもある。
自動で印刷出力する機能など省力化を求める現場の声に応えた。
共立電気計器KEW5050
漏れ電流をIorで探査、200ミリ秒で4系統記録
共立電気計器のロガー「KEW 5050」は、Ior(対地絶縁抵抗漏えい電流)を監視する。
漏れ電流は大きく分けて、絶縁不良によるものと対地静電容量によるものの2種ある。この静電容量成分による漏れ電流はIocと呼ばれ、通常のリーククランプメーターでは絶縁不良による成分(Ior)と判別できない。
漏電遮断器は数十mAレベルで漏れ電流を監視し回路を遮断。そのため、発熱しない安全な漏えい電流のIocでも誤作動する場合があった。
近年、インバーターなど直流に変換する機器が増加し、高調波による静電容量成分の漏れ電流の増加が課題となっている。
Ior漏電監視ロガーは静電容量成分と絶縁不良による危険な漏電を分けて測定できる。
漏電遮断器が動作すると、電気管理技術者は配線や機器によるトラブルか、静電容量成分によるものか原因調査が求められる。
KEW5050では高速サンプリング(24.4マイクロ秒)を行い、FFT(高速フーリエ変換)で200ミリ秒ごとに実効値演算を行った測定・ロギングが可能だ。高精度で内部演算してノイズや高調波成分を完全に分離できる。
測定場面に合わせてクランプの口径を選べるのも特長で、直径40ミリメートルと68ミリメートルの2種を用意した。最大4系統同時に測定・記録し、漏れ電流の箇所を特定するため多数の系統を同時に評価したいニーズに応える。
発生した漏れ電流を打ち消し合う三相4線がメインの海外に比べ、三相3線方式が多い日本ではIorが問題になりやすい。S相の静電容量成分がないためバランスが崩れて漏れ電流成分が生じるためだ。
測定の有効性が認知されるにつれ従来のIoではなく、Iorで評価する需要が高まっている。KEW5050は漏れ電流で絶縁を管理する需要が高い韓国などの海外でも使用が進んでいる。
ロガーとしてだけでなく、通常のクランプメーターとしても多く活用されている。本体とクランプ部が分離しており、高所や狭い所での測定にも適している。