2022.07.19 アップデーターの「顔の見える電力」再エネの付加価値明確化 三菱総研と共同で

 再生可能エネルギーに由来する電力の付加価値を明確化できるか--。そんなテーマで、再エネ系新電力のUPDATER(アップデーター、東京都世田谷区)が、大手コンサルタントの三菱総合研究所と共同研究に乗り出した。アップデーターは、再エネ発電に取り組む事業者の人となりや思い入れなどの情報を公開し、需要家が調達先を選べるサービスを電力販売の売りにしている。そうした価値を可視化することで、さらなる再エネ拡大の弾みに寄与させていく考えだ。

 再エネ電力を巡っては、二酸化炭素(CO2)を排出しないという価値を「環境価値」と定義。電気そのものから切り離した証書として、日本卸電力取引所が運営する非化石価値取引市場で取引が始まっている。電気と環境価値は「それぞれ違う扱いをされる」(アップデーター)。

 アップデーターの再エネ電力事業「みんな電力」は「顔の見える電力」サービスで、発電事業者の人となりや発電所の場所、事業に取り組み始めた思いなどを、ホームページ(HP)上で公開するほか、商談などの際に個別に情報開示し、需要家が調達先を選ぶ重要な判断材料の一つにしてもらっている。2016年から始めた、業界で初めての仕組みだ。

 顔の見える電力として全国の約600の企業や個人から再エネ電力を調達。うち約150の事業者をHPなどで公開している。

 アップデーター側から提供される発電事業者の「顔」や地域の電源といった情報が、「企業なら、その再エネ電力をどれくらいまで追加で料金を支払っても選びたいか。個人の場合は、再エネ電力に切り替える際、どれくらい行動に影響を与えるかなどをアカデミックに実証していく」(同社)のが狙いだという。

再エネ普及を後押し

 実証は「付加価値の部分をもう少しクリアにできれば再エネを選ぶ人が増えるだろうという仮説」(同社)に基づく。発電所のある地域性の情報が大事なのか、発電事業者の個人の思いに重きを置くのか--。意識や志向性などを可視化できれば新電力が訴求しやすくなり、爆発的な拡大が求められる再エネ普及の後押しになる。

 アップデーターは「当社がこれまで継続してきたサービスであり、再エネのプラスの価値について、シンクタンクと分析して普及につなげていくことは有意義だ」とする。同社は約4000の事業所に電力を供給しており、その一部の需要家にアンケートや聞き取り調査を実施。どの程度のコスト増なら許容範囲かなどを確認する。12月ごろまでを予定。

 三菱総研は、これまでの研究成果を反映して公表した「50年カーボンニュートラル実現に向けた提言」で、電力部門の早期ゼロエミッション化が「最初の必要条件」と位置付けた。実現に向けて、アップデーターとの研究成果を活用していくという。

再エネ発電所「応援」1000万円超に
顔の見える電力

 UPDATER(アップデーター、東京都世田谷区)は、みんな電力として電力調達する再生可能エネルギー発電所への応援金が6月末に累計1000万円に到達したと発表した。「顔の見える電力」の個人客が毎月の電気料金から100円を好みの発電所に支払い、活動を応援できる仕組み。約5200世帯が参加しており、発電事業者側は、売電収入に加えて応援金を受け取れる。

 参加するのは開始当初(2016年)は165世帯だったが、19年に1000世帯を超え(1051世帯)、20年には2621世帯、21年は4081世帯、22年が5152世帯と急激な伸びを示す。

 一定期間、応援金を継続することで、ソーラーシェアリングで栽培された作物といった発電所や地域ならではの特典も受けられる。需要家と発電事業者を「つなげる」新たな仕組みだ。