2022.07.20 【TECHNO-FRONTIER特集】ノイズ対策技術動向5G本格普及で新製品開発活発化

産業機器向けの三相4線式ノイズフィルター

 電子機器・システムの高機能・高性能化に伴い、ノイズ対策技術の重要性が一段と高まっている。ノイズを出さない、ノイズに耐えられる製品の開発が要求され、第5世代移動通信規格(5G)の本格普及に向け、ノイズ対策部品の新製品開発が活発化している。

 5Gは高周波帯域を使用することから、マテリアルの高周波対応が必要になる。ノイズ対策部品は高周波化に伴って小型化するが、高周波帯域での効果的な減衰量を確保することが重要。

 5Gは専用端末だけにとどまらず、自動車や製造装置などいろいろな産業分野に波及していくため、超小型品から大型品までさまざまなノイズ対策部品が要求される。電子部品各社はこれらをターゲットに、製品開発を加速させている。

 自動車は、CASEの進展に伴いECU搭載点数が増加するため、機器間を接続するインターフェースにおけるノイズ対策が不可欠。特にADAS/自動運転技術の高度化に必須の車載カメラやミリ波レーダー、LiDAR(ライダー)などでは、誤動作が許されない。電気自動車(EV)などの電動車のモーター駆動系も強固な対策が求められている。

 産業機器分野では、モーター駆動、インバーターの普及などにより、ノイズ対策の重要性が一段と高まっている。このため、コモンモードチョークコイルの搭載が広がっており、小型で高減衰量を得るためにコアとして使用されるフェライトの高性能化が進展している。

 スマートフォンは、小型ボディーに多くの機能が搭載されるため、隣接部品間の電波干渉を無くすことが重要。マルチバンド化で利用周波数が複数化していることから、より高度な対策が必要となる。

 スマホでノイズ対策用に一般的に利用されているのがフェライトチップビーズ。既に0402サイズまで量産化されている。LCフィルターは、積層、薄膜などの高速差動伝送ラインの対策に用いられている。ESD対策用に、超小型サイズの積層チップバリスターの商品展開も進む。

 ノイズ抑制シートは、ICのパッケージ表面やコネクター、FPCなど、ノイズの発生源や伝送路に貼るだけでノイズを抑制できる。磁性体粉末を樹脂中に分散・混合してシート状にした構造で、製品に含まれる磁性材料が自然共鳴し、電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換することで高周波ノイズを効率的に抑制する。5G用の高周波帯域対応品も開発されている。