2022.07.22 【家電流通総合特集】パナソニックコンシューマーマーケティング宮地晋治代表取締役社長

デジタル化の推進加速、パナソニック家電製品正規取扱店制度で お客に寄り添う

 デジタル化の推進や「パナソニック家電製品正規取扱店制度」の取り組みを加速させつつ、お客さまに寄り添った事業を展開していく。

 上海ロックダウンの影響で、電子レンジなど調理家電の供給不足が発生したり、新製品の発売日にズレが生じたりしてしまったが、生産も正常化が進み、需要の強いドラム式洗濯乾燥機も他社並みに供給できるようになってきた。ただ、ロックダウンの影響は小さくなく、4~6月は厳しい数字となった。

 供給体制が正常に戻りつつある7月以降は、販売も回復してきている。7~9月は計画通りに推移することで前年成長を見込んでおり、第3四半期(10~12月)で当初の売り上げ計画にキャッチアップしたいと考えている。全ての商品で、8月のお盆明けには供給が正常化できるのではないかと考えている。為替の問題も無視できないが、そうした中でも適切な価格はどこなのか検討していく。

 秋以降は商品価値の訴求を徹底していく。商品価値をしっかりと伝えた上で、お客さまに普及機か高付加価値製品のどちらが良いのか選んでいただく。商品の値上げや供給が停滞するような事態が発生した際は、ホームページ(HP)で1カ月前には公表し、販売店にもきちんと説明していく。お客さまの迷惑に少しでもならないようメーカーの責任を果たしていく。

 秋口からは商品価値を高めた商品をさらに増やすことで、販売店の粗利改善につながる施策も強化していく。商談の在り方も従来から変わってきている。

ロングライフ化

 付加価値の高い商品を「ロングライフ化」させることも重要となる。IoT家電であれば、ソフトウエアをアップデートすることで、購入後に新たな機能を搭載するなど商品の価値を維持することができる。毎年のようにマイナーチェンジを行う商品サイクルではなく、3~5年のロングライフで、新商品を発売する際にはこれまでにない価値を提案できるようにしたい。ネットワークを活用して新たな提案をすることで、旧機種であっても商品の価値が認められ、価格も下がりにくくなる。それにより、「いつ買っても価格は同じ」という状況になり、年間を通して購入動向をフラットにし、商品供給も安定させることができる。

 そうした状況を見据え、3年をめどに新たなサプライチェーンも整備したいと考えている。2022年度は、効率的な生産体制を確立するための準備に加え、商品のロングライフ化を加速するためのトライアルの年と位置付けている。23年度には整備をさらに進め、24年度には新たな体制で事業を始められるようにしたい。

 これまでの取り組みで、量販店とパナソニックショップ(PS)の価格の差は少なくなってきている。21年4月1日から開始した「パナソニック家電製品正規取扱店制度」など、公正取引委員会とも相談や確認をしながら進めている。その上で、正規取扱店で購入いただけるように交通整理をしていきたい。

 現在はEC(電子商取引)も拡大し、どこで買うのかお客さまの選択肢が増えている。そうした中でもPSの強みはリアルにおけるサービスで、正規取扱店として価格差を最小化できれば、PSの強みを生かすことができる。

 営業やサポートなどのシステム面では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく。あらゆる分野でDXが注目される今、デジタルへの投資は必須だと考えている。システムに取り入れれば、さまざまなデータの共有ができるようになり、接客もしやすくなる。

 商品に取り入れれば、IoT家電のようにソフトのバージョンアップで新しい使い方を提案できる。ただ、その分、購入後のケアやサポートがこれまで以上に必要になってくる。そうなると、お客さまに寄り添う地域店の力が発揮される。お客さまの困り事に対応することで、その活動が各店舗の差別化にもなる。そこに、DXで実現するデータ共有を加わえれば、接客の質が向上する。システムと商品の両方をDX化することで、PSのご商売にも貢献していきたい。

 定額制(サブスクリプション)サービスも今後、変化すると考えている。例えば、商品を修理できる期間が長くなれば、新規の販売台数の落ち込みが予想される半面、中古品の販売やサブスク利用が増える可能性がある。ここに新たなビジネスチャンスが生まれるはずだ。

 サブスクに関しては、普及機に対する考え方や今後の商品戦略とも密接にリンクしてくる。現在、埼玉県熊谷市と栃木県鹿沼市でエアコン高級機のサブスクを行っている。どんな反応になるか不安もあったが、高齢者世帯だけで予定していた台数が埋まるほど需要があった。サポート体制についても今後は提案しつつ、次年度以降も続けていきたい。IoT家電との連携で、できることやサポートの仕方が見えてくる。

 サブスクは、新機能といった商品の価値を提案するのとは異なり、家電の新たな魅力を訴求できる。これまでにない選択肢をお客さまに提案するものであるため、今後は地域店のビジネスにも生かせるようにしていきたい。

 デジタル投資をこの3年で一気に進めてきた。収集してきたデータを使いこなせるようにすることで、世の中にあった提案を行うとともに、地域店の事業継承にも生かしていきたいと思っている。

 21年5月末に家電の会員制サイト「CLUB Panasonic(クラブ パナソニック)」(クラパナ)を一新した。お客さまの商品情報を入力することで、新商品との機能やサイズの違いが明確になる。これは、店舗だけでなく、お客さまにも大きなメリットになると考えている。

 お客さまのニーズに合わせてクラパナからPSにつなぐなど、デジタルとリアルを掛け合わせた施策にも今年から取り組んでいく。「高いけど壊れないナショナル」と言われたように、EC時代であっても、パナソニックならではの価値をPSと共に大切にし、多様化するニーズに応えていきたい。