2022.08.03 【コネクター総合特集】 メーカー各社、生産体制を増強国内外で新工場建設、既存工場拡張

山形航空電子(山形県新庄市)第2工場B棟の完成予想図

 コネクターメーカー各社は、国内外で生産体制拡充への投資を活発化させている。各社は、旺盛な需要に対応し、グローバル生産能力増強のための新工場建設や既存工場拡張、生産ライン新設などの取り組みを加速。同時に、BCP(事業継続計画)対応強化のためのグローバル生産体制再構築などにも力が注がれる。特に最近は、車載・産機などの高付加価値市場に対するモノづくり力強化を目的に、国内生産体制の再強化を進める企業も多い。

 コネクターメーカー各社の新工場建設や新工場棟増設の動きは、2017年ごろから19年ごろまで活発さが継続し、ASEANや中国を軸に、積極投資が行われた。同時に、国内外での試験・評価体制の増強や、工場のスマートファクトリー化、モノづくり力強化のための最新設備導入なども進んだ。

 20年から21年前半ごろにかけては、コロナ禍による先行き不透明感などを背景に、不要不急の投資を先送りする動きも一部でみられたが、21年後半以降は、再度、積極投資への機運が上昇。22年から23年にかけても、多くのコネクターメーカーが国内外で新工場建設や既存工場拡張を計画している。

 地域別では、グローバル供給拠点として、ASEANでの生産能力増強が重視されているほか、地産地消ニーズの高まりに対応するため、多極での生産体制増強が推し進められているが、一方で、最近は国内マザー工場への再投資や新たな国内量産工場建設への動きも目立っている。

 日本航空電子工業は、コネクター事業の生産拠点である山形航空電子(山形県新庄市)第2工場に新棟(B棟)を建設する。今年4月に着工し、23年春の完工を予定。EV向けコネクターの生産技術確立・生産能力拡大を図るとともに、自動車・産機向けなどの国内生産拡大によりサプライチェーンの強靭化(きょうじんか)を進める。

 建設する第2工場B棟は、延べ床面積約1万6000平方メートル。第1工場を含めた山形航空電子全体の総床面積は現状の約1.5倍に拡張される。省エネ設備の導入や電力の見える化などの取り組みを進め、「環境にやさしい工場」を目指す。

 ヒロセ電機は、22年度中に、子会社の郡山ヒロセ電機(福島県郡山市)の新工場の本格的建設に着手する予定。新工場は、車載・産機を中心とする先端モノづくり工場として、23年度中の完工を予定する。現行の郡山工場に対し、約2.7倍の延べ床面積となる。

 海外でもマイクロコネクターの開発・生産強化のため、韓国のヒロセコリア精密コネクタセンターを増築し、24年度の稼働を予定。増築後は現行の約1.3倍の延べ床面積に拡張される。

 イリソ電子工業は今年3月、国内新工場を秋田県横手市に建設すると発表した。23年度の着工、25年の操業を予定する。同社の国内生産拠点は、マザー工場の茨城工場(茨城県常陸大宮市)があるが、今後のEV、HEVなどの環境対応車向け車載機器を中心とした需要の拡大、「マルチ生産体制」によるBCPおよびマーケットインによる物流費の低減と生産効率を見据え、秋田新工場を建設する。新工場では、一層のスマートファクトリー化を含め、コスト競争力強化に取り組む。

 山一電機は、半導体テストソケットやコネクターの生産体制増強のため、佐倉事業所(千葉県佐倉市)の敷地内に新棟を建設する。23年2月に着工し、24年4月の生産開始を予定。

 米国SAMTEC社は、コロナ禍でのサプライチェーン混乱などを踏まえ、シンガポールに「ディストリビューションセンター」(大規模物流倉庫)を建設し、22年内の運用開始を予定する。これにより、スピードを重視した顧客サービスの充実につなげる。