2022.09.08 【業務用無線特集】 基地局は右肩上がりで増加

業務用、アマチュア問わず無線の利便性が見直されている(写真はハムフェアより)

場所選ばず同時通話、災害時も強い

 スマートフォンの普及で誰もが簡単に移動通信ができるようになったが、社会インフラの安定運用やさまざまな現場での活動にはコストや運用性などからも業務用無線が秀でている。無線基地局数も右肩上がりで増えており、特に業務用途で使われる簡易無線は大きく伸びてきている。場所を選ばず同時通話ができる上、災害時などにも強い業務用無線はこの先も用途を広げて使われていきそうだ。

 業務用無線は、社会インフラを安定運用していく通信手段として欠かせない存在になっている。携帯電話が普及する中では現場の業務用途の通信にも携帯電話を使うケースもあるが、円滑で確実なコミュニケーションには無線機器が適している。

 無線は周波数で割り当てが決まっており、免許申請や登録が必要な無線局もある。用途も多彩だ。業務用無線の用途で一般的なものは、社会インフラ系では防災無線や消防無線、警察無線、鉄道無線、船舶無線、航空無線などがある。保守運用や取材活動など現場の業務で使われる一般業務用無線や、簡易無線、MCA無線もあり、利用シーンは幅広い。

 一般的な企業の業務などで使う業務用無線は、特定小電力無線、簡易無線、小エリア通信システム、一般業務用無線、MCA無線などになるだろう。特に特定小電力無線は通信エリアが狭いため、免許申請などが必要なく家電量販店などでも売場が充実している。

 申請や登録が必要な無線は、出力が大きく、通信エリアが広いものになる。総務省の統計では、現在、無線局数は2億9000万局を超え、この1年で1000万局以上増えた。簡易無線局は着実に伸びてきている。

簡易無線局のデジタル化

 簡易無線局については、デジタル化も喫緊の課題。350メガヘルツと400メガヘルツ帯のアナログ周波数の活用は電波の利用が拡大する中で見直しが図られ、2008年8月に新たなデジタル簡易無線局の周波数が割り当てられることになった。これに伴い当初、アナログ簡易無線局の周波数使用は、今年11月30日までとしていた。

 現在までアナログからデジタルへの移行を進めてきたが、新型コロナウイルス感染拡大などでデジタル化への移行が遅れることが見込まれ、21年9月に使用期限を2年間延長し、24年11月30日までにすることを決めた。

 ただ、移行期間が2年延長されたものの、デジタル化は速やかに行う必要があるため、この先も簡易無線のデジタル化への対応が続くとみられる。関連機器の出荷は、この先も伸びそうだ。

端末の電源あれば通信可能

 スマホなど携帯電話は広域でコミュニケーションできる特徴があり、個人での用途では欠かせないツールになっているが、複数人との情報伝達や災害時などの安定した通信という面では課題もある。

 一方の業務用無線は携帯電話回線とは違い、端末の電源が確保できれば通信ができる。確実に安定した通話ができるツールとしては現状では最も優れているため、業務などでの利用でも注目されてきている。

 特にデジタル簡易無線は業務での使い勝手がよい。簡易無線は最大5Wで出力できるため、数キロメートル程度であれば確実に安定した通信ができる。屋内や建物のフロアをまたいだ通信もできる。出力数で通信距離も変わるため、用途に応じた端末導入が必要になるだろう。

 デジタル簡易無線は免許局の申請か、登録局の申請が必要になる。免許局は企業などが登録し、社内スタッフが複数台を使って通話できるようになる。使える人の範囲は社内に限られるものの、安定した通話ができる。

 一方の登録局は登録申請をすれば登録者以外でも使えるため、社内に限らず誰でも高出力の無線端末が使える特徴がある。レンタル無線機などもこのパターンが多い。

 デジタル簡易無線の用途では、警備の際の連絡手段や物流倉庫での連絡ツールにも最適だ。イベントなどの運営に使うことも多いだろう。確実なコミュニケーションができるツールとして利用できる範囲の裾野は広い。

ハイブリッド型の無線機も

 より広範囲での通信を行うには、MCA無線機とIP(インターネット・プロトコル)無線機もある。MCA無線機は移動無線センター(MRC)が提供する基地局を介した無線で、特に災害時などの非常時に安定した通信ができる特徴がある。サービスは二つあり、800メガヘルツ帯の電波を使う「mcAccess e」と、LTE技術を使った「MCAアドバンス」だ。MRCの中継局は全国114カ所あり、安定して通信できるよう徹底管理されている。

 IP無線機は携帯電話事業者のインターネット回線を使って無線通信をする。携帯電話の入るエリアであれば基本は通信ができるため、全国で通話可能だ。特別な手続きなく簡単に使えるため、長距離トラックやバスなどのほか、全国拠点網を持つ企業などは使い勝手がよい。

 主要無線各社は、さまざまな用途に対応した端末を用意している。簡易無線であればアナログとデジタルを両方使えるハイブリッド型から、免許局、登録局の両方で使える端末などもある。IPトランシーバーなども併用できるハイブリッド型なども発売されている。