2022.09.16 【抵抗器特集】グローバル需要堅調持続 自動車、5G、産機、エネマネなど 成長分野に照準

モールド形巻線抵抗器モールド形巻線抵抗器

 抵抗器市場が好調に拡大している。抵抗器のグローバル需要は2021年に大きく増加し、足元でも堅調さが継続している。抵抗器メーカー各社は、自動車、第5世代移動通信規格5G、産業機器、エネルギーマネジメント関連などの成長分野に照準を合わせ、次世代ニーズに対応する新製品開発や製品ラインアップ拡充を推進する。

市場動向

 抵抗器のグローバル市場は、17年から18年にかけて好調に増加したが、18年秋以降、米中貿易摩擦激化に伴う中国経済減速や世界的な自動車市場低迷などが響き、18年末から19年にかけて低調に推移した。

 さらに20年は、年初からの新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う経済活動低迷により、年前半は厳しい状況が続いた。だが、20年夏までに需要減が底を打つと、同年秋以降は月を追って需要が回復。この結果、電子情報技術産業協会(JEITA)統計によると、20年度累計(20年4月~21年3月)での抵抗器グローバル出荷額は前年度比1%増の1449億円となり、2期ぶりに前年度比プラスで着地した。

回復の勢い増す

 21年の抵抗器需要は、20年後半以降の回復傾向にさらに勢いが増し、年間を通じて高水準の受注推移が継続した。特に21年の夏場以降は、半導体不足に加えて、業界全体での抵抗器の需給逼迫(ひっぱく)も指摘されるようになった。このため、抵抗器メーカー各社は、国内外工場でフル操業を続けるとともに、需要増大に対応するための生産能力増強への取り組みも活発だった。

産機、EVなど好調

 抵抗器市場は、22年も堅調な推移が続いている。今期4月以降は、半導体不足や中国ロックダウンに起因する自動車減産や、中国スマートフォン需要の停滞、コロナ特需の一段落、地政学リスクやインフレ加速などに伴う消費低迷などの影響により、一時と比較すると抵抗器の受注はやや落ち着いてきているが、産機関連需要や電気自動車(EV)関連、5G関連などの需要が好調を継続しており、抵抗器各社では、高水準の受注残を消化すべく、フル操業を続けている。

 加えて、今春以降の急速な為替の円安進行も、抵抗器各社の輸出売上高拡大を促進している。この結果、JEITA統計での22年4~6月の抵抗器グローバル出荷額は、前年同期比10%増の500億円となり、高い成長が続いている。

 抵抗器市場拡大の背景は、コロナ禍からの経済回復に伴う自動車生産回復、5G関連での端末・基地局需要増大、半導体製造装置需要の拡大、産業機器・FA関連需要の急増などが挙げられる。21年以降は、サプライチェーンの混乱などを踏まえた部品ユーザーの在庫積み増しも抵抗器需要を底上げしている。

 抵抗器のグローバル需要は今後も中長期での増加が見込まれる。特に高機能化やxEV化が進む自動車は、今後も付加価値の高い抵抗器の需要をけん引する分野として期待が高い。5G関連市場の本格化も端末用や基地局用を含め、抵抗器市場を活性化させる。デジタルシフトの加速によるICTや半導体関連での需要増も期待される。21年に急回復した産業機器向け需要は、少なくとも22年度いっぱいは高水準が継続する見通し。

 抵抗器各社は、今後も自動車や携帯端末、産業機器、IoT関連などの成長市場に照準を合わせ、特徴ある新製品開発や営業・マーケティング活動を強化することで、持続的な成長を目指す。

小型・薄型化の追求が進展 産機など大電流・高電圧対応も

製品動向

 民生機器市場向けでは、スマートフォンやウエアラブル端末などの携帯端末、各種小型モジュール、IoT関連機器向けに、チップ抵抗器の小型・薄型化追求が進展している。

 特に5G化で高機能化が進むスマホは、高密度実装化が一層強まり、チップ抵抗器への軽薄短小要求も厳しさが増している。今後は、0603、0402サイズなどの微細チップ重要が伸びていく見通し。チップ抵抗器の搭載点数を削減するため、2連チップなどの多連チップの搭載も進む。

 スマホの高周波回路では、高周波帯域での高精度な抵抗器が要求される。このため、抵抗値精度や抵抗温度係数などに優れた薄膜チップ抵抗器が使用される。薄膜チップも一層の小型化が要求され、0402サイズなどの小型化が進展している。

 電源回路では電流検出用途で低抵抗チップが用いられ、小型、ハイパワー、低抵抗を特徴とする金属板チップ抵抗器などの需要が伸びている。

 次世代高密度実装向けでは、0201サイズの超小型品の開発・提案も進んでいる。

 車載用抵抗器は、車の電子化・電動化に伴う車載アプリケーションの搭載増により、用途が拡大している。

 特に近年は、xEV化の加速で、モーター駆動関連のDC-DCコンバーターやインバーター、バッテリー、チャージャー関連でパワー抵抗器の需要が増大。ADAS/自動運転技術の高度化も、ECUの搭載点数を増やし、抵抗器需要を押し上げている。

 ミリ波レーダーや車載カメラ、LiDAR(ライダー)などのセーフティーシステムでは、各制御回路を小型モジュール化する動きがあり、チップ抵抗器も小型化が進展。0603や0402サイズなどの極小チップの採用が始まっている。

 電源周辺の回路向けでは、硫化発生による抵抗器断線を防止するために耐硫化チップ抵抗器が開発され、特殊な材料の使用により一般的な製品と比較して数十倍の耐硫化特性を有する製品などが実用化されている。

 半導体製造装置や工作機械、FA装置、産業用ロボット向けなどでは、大電流、高電圧対応の製品が多用される。

 計測器や検査・分析装置などの高精度が要求される用途では、薄膜抵抗器や金属箔(はく)抵抗器などが多用される。金属箔抵抗器は、平面に圧延されたニクロム系金属箔を平滑なセラミック基板に接着した抵抗体とした抵抗器。0.14ppm/度などの最小抵抗温度係数(TCR)、プラスマイナス0.005%の最小抵抗値許容差、5ppm/年などの非常に優れた長期安定性を特徴としている。

 医療関連機器向けでは、PET(陽電子放射断層撮影法)やMRI(磁気共鳴装置)などの医療診断装置での高精度画像診断のため、強磁界でも影響を受けない磁性レスチップ抵抗器などが開発されている。