2020.01.19 EVバス向け蓄電池循環の仕組み構築 JXTGが中国・BYD日本法人と協業

小型のEVバスのイメージ画像(ビーワイディージャパン提供)

 石油元売り最大手、JXTGホールディングスは、中国の電気自動車(EV)メーカーの最大手、比亜迪(BYD)日本法人と協力して、EVバス向け蓄電池を循環させる仕組みづくりに乗り出す。

 バス会社に「リース」後、回収して「リユース」し、さらに素材レベルで「リサイクル」するモデルを構築し、25年をメドに商用化を目指す。こうした蓄電池の仕組みは、世界でも例がないという。


 協業する日本法人は、ビーワイディージャパン。蓄電池メーカーとして創業したBYDは、00年に入ってEV製造・販売を開始。近年の販売台数は、世界トップレベルを誇る。

 両社が想定する循環モデルの具体像はこうだ。EVバスに搭載する蓄電池をバス会社にリース(1次利用)し、消耗して使用済みとなった電池を回収。定置用としてリユース(2次利用)し、その後、廃棄される電池を素材レベルに分解し新規材料としてリサイクル(3次利用)する。

 EVに搭載する蓄電池は加速性能などの面で高い能力が必要だが、定置用では低い性能でも十分に活用できる。そのため、今回のモデルでは、変動電源である再生可能エネルギー、特にメガソーラーの調整用としてリユースすることを想定する。

あらゆる車のエネルギー提供

 両社の協業のきっかけは、「互いの強みが生かせる」(JXTGホールディングス未来事業推進部)点だ。

 蓄電池の高い技術を持つBYD側は、既に日本でEVバスを販売。現状で20台以上が導入されている。今年4月に本格参入するため、日本向けの新型車種を投入し、24年までに販売1000台を目標とする。

 こうした動きに合わせて、JXTGは20年春から、民間のバス会社と共同でEVバス運行の実証実験を始める。運行距離と蓄電池の劣化具合の関係などのデータを収集し、リースモデルの具体化を進める。バス用の蓄電池は乗用車用に比べて2倍以上の容量があり、リユースする再エネの調整用としては、「少しでも大きい容量の方が、適している」(同部)という。

 今回、循環の対象とするのは、EVバスで主流のリチウムイオン電池。小型・軽量でも高い出力を維持できるのが特徴だ。JXTGは、グループ会社の事業の柱の一つとなっている金属リサイクルのノウハウがある。ニッケルやコバルトといった鉄加工で使われる素材などをリサイクルする技術の蓄積があり、同業でも珍しい強みとなっている。

 ただ、同社が「モデルづくりで最も難しい一つ」とするのが、蓄電池のリサイクル技術の確立だ。どの程度の設備投資をして、どのレベルまで素材を分解して純度を高めるか。技術開発や試行錯誤が必要になる。同部の担当者は「石油にこだわらず、あらゆる車のエネルギーを提供していくという観点からEV関連にも参入していきたい」と話している。