2023.01.17 【半導体/エレクトロニクス商社特集】復活を担う東北・九州地区動向

東北半導体産業発展に貢献するキオクシア岩手

ソニーセミコンダクタ九州熊本テクノロジーセンターソニーセミコンダクタ九州熊本テクノロジーセンター

 日本の半導体産業復活は地域経済を活性化し、地域の産業基盤を強固にする。半導体・電子デバイス関連産業が数多く進出している東北地区と、「シリコンアイランド」の復活を目指す九州地区が新たな取り組みを始めている。

東北地区

半導体・電子デバイス関連産業などで構成「デザイン研究会」設置

 東北地区の半導体・電子デバイス関連産業の基盤強化を目的に東北経済産業局が中心となり「東北半導体・エレクトロニクスデザイン研究会」が2022年6月に設置された。東北地区に進出している半導体・電子デバイス関連企業を中心に教育機関、行政機関など65法人(機関)で構成している。

 東北地域の半導体産業は約2兆8000億円(20年)で、全国のシェアの16.6%を占める。うち電子部品・デバイス・電子回路製造業が2兆2500億円、約80%を占める。

 スマートフォンやデータセンター向けなどメモリー需要に対応した東北進出企業の設備投資も盛んに行われている。キオクシア岩手(旧東芝メモリ岩手、岩手県北上市)は2番目となる製造棟(K2)を建設中で、23年に完工予定。東京エレクトロン宮城、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズは20年10月、岩手に6棟目となる新生産棟が完工。21年9月には宮城技術革新センターが完工し、さらに宮城の新開発棟(総投資額約470億円)の建設を発表。23年春に着工し、25年春に操業を開始する。アルプスアルパインは、古川開発センター敷地内にR&D新棟を建設中で23年3月に完工を予定する。富士電機津軽セミコンダクタ(青森県五所川原市)は、SiCパワー半導体の増産に向けた設備投資を行い、24年度に量産を開始する。

 人材育成では、東北大学や山形大学を中心に半導体・エレクトロニクス関連の研究開発拠点・コンソーシアムが整備されるなど、技術ポテンシャルは高い。東北大学半導体テクノロジー共創体では「ZoN-MRAM&スピン素子/CMOSHybridプロセッサの研究開発」など、数々の最先端技術の研究開発を行っている。

 山形大学では「デバイスの耐久性を高めるナノ材料塗布プロセスによる有機無機界面設計技術」などの研究を進めている。また、鶴岡高専は「高速イオン伝導が可能な電子-イオン混合伝導性有機材料の創成と伝導メカニズムの解明」などのテーマで研究を行なっている。

九州地区

「シリコンアイランド」再興へ

 1970年代から半導体の九州はかつては「シリコンアイランド」と呼ばれ、日本の半導体産業をけん引してきた。2000年以降、日本の半導体が韓国や台湾勢の台頭とともに衰退化する中で、シリコンアイランドのアドバンテージも低下したが、それでも現在約1000社の半導体関連企業を擁し、生産額も日本の約40%(20年)を占めるとされている。

ソニーセミコンダクタ九州熊本テクノロジーセンター

 世界最大の半導体ファウンドリー企業である台湾のTSMCの熊本進出が決まったことを受けて、九州の半導体産業が注目を集め、地元の期待も高まっている。

 九州は経済産業省の産業クラスター計画により、半導体・エレクトロニクス関連企業に対する情報提供やセミナー・研究会の開催、販路開拓、ビジネスマッチングなど幅広い支援を行う「九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ、福岡市博多区)」が02年5月に設立された。

 その後、各地域の産業クラスターは自律的発展期への移行(実質的には10年度より)に伴い、現在は民間が中心となった地域主導型のクラスターとして活動を進め、九州での半導体・エレクトロニクス関連産業の振興を図っている。

 九州には、デバイスや製造装置、材料といった幅広い半導体産業をトータルに対応できる業界サプライチェーン構造があることが特徴になっており、半導体、半導体製造装置、半導体材料、関連産業なども業界全体での相乗効果が生まれている。

 TSMCは、ソニーグループの半導体子会社であるソニーセミコンダクタ九州熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)工場に隣接する工業団地に新工場を設け、24年末の操業開始に向けて建設が進む。

 TSMCの熊本工場は、画像センサーを作るソニーグループと自動車部品メーカーのデンソーと合弁で建設され、計画によると工場の従業員1700人のうち1200人は地元で採用する。投資総額は約1兆円で、日本政府は最大4760億円の補助金を出す。

 TSMC進出を受けて、多くの半導体関連企業が熊本に進出すると見られている。

 半導体産業は進化のスピードが早いため、先を見据えて最先端の半導体技術力を創出し続けていくことがさらに重要になる。そのために人材育成が大きな課題となる。

 半導体産業の人材を育成する動きが熊本県を中心に九州で活発化している。高等専門学校は半導体産業の人材育成の全国展開を視野に新たな教育をスタート。「拠点校」として、佐世保工業高等専門学校と熊本高等専門学校が認定を受けた。また熊本大学は新教育課程で挑む。オール九州の産学官組織は産業界の現状や将来を見据え、シリコンアイランドの再興を目指す。