2023.01.25 【ネプコンジャパン/オートモーティブワールド特集】カーエレクトロニクス動向

テスラの電動SUV「モデルY」

EV・PHV用急速充電器(ニチコン)EV・PHV用急速充電器(ニチコン)

電子部品・素材メーカー 先行開発を活発化 xEVなど次世代技術へ

 自動車市場では、「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)」をメガトレンドとした次世代自動車の開発や新たなモビリティーサービスの拡充が盛んになっている。特に近年は、世界的な脱炭素ニーズの高まりにより、xEV開発の動きが加速。ADAS/自動運転技術も一段と高度化している。これらを背景に電子部品・素材メーカーは、中長期を見据えた車載用電子部品・電子材料の先行開発を活発化させている。

 自動車の世界生産台数は、乗用車と商用車(トラック、バス)を合わせ、2010年代後半に年間9000万台超まで拡大した。

 20年は、新型コロナ感染拡大の余波で自動車世界生産台数が7700万台程度まで急落。21年も世界的な半導体不足が響いて急速な回復には至らず、22年も、半導体不足の長期化や春先以降の長期にわたる中国でのロックダウンなどが影響して主要自動車メーカー各社が計画通りの生産を実施できなかったため、21年比微増の8100万台前後にとどまった。

 一方で、車載用電子部品市場は、車の高機能化やxEV化に伴う電子装備率の上昇により、21、22年も着実な成長を遂げた。特に22年は、半導体不足が続いたものの、中国をはじめとする好調なEV生産拡大が、付加価値の高い車載用電子部品需要を押し上げた。

 CASEは、今後のモビリティー革命をけん引するメガトレンド。中でも近年は、カーボンニュートラル実現に向けた電動化の動きが世界的に加速している。各国や主要都市でガソリン車規制に向けた法制化が急ピッチで進み、主要自動車各社の中長期での電動化目標も相次いで公表されている。

 通常のガソリン車には車両1台で3万点前後の自動車部品が搭載される。これに対し、シンプルな構造のBEV(バッテリーEV)では部品点数が2万点以下に減少するとされるが、一方で、半導体・電子部品に関してはEV化で車両1台当たりの搭載点数が着実に増加する。EVと親和性の高いADAS/自動運転技術も、EV化の進展とともに高度化し、電子部品・モジュールの搭載点数を増大させる。

Eアクスル需要増

 今後のEVでは、モーターとインバーター、ギアなどを一体化したユニットである「E-Axle(Eアクスル)」の需要が大きく増加していくことが予想されており、電子部品メーカーでは、Eアクスル用部品の開発を強化するだけでなく、新たに自社でEアクスルの製品化に乗り出す電子部品企業も見られる。

 自動運転の実現には、車外通信性能の高度化や高精度な物体認識、高度な車両制御、AI(人工知能)やエッジコンピューティングを含む情報処理技術、ノイズ対策技術など、さまざまなテクノロジーの融合が必須だ。

 電子部品各社はこれらを実現するための要素として、各種センサーや制御デバイス、通信モジュール、ノイズ対策用部品、撮像系部品、大容量高速伝送デバイスなどの開発を強化している。

 乗員の安全性や快適性向上のための車の高機能化も新たな電子部品需要を創出する。特に最近は、車室内での幼児置き去り事故を防止するための各種の車室内監視システムの開発が重視されており、ミリ波レーダーやセンサーを活用したソリューションの開発・提案が進められている。

 さらに、30年以降に実現するとされる完全自動運転車での車室内のビジネスルーム化や、エンターテインメント空間化などを視野に入れた次世代の車載映像・音響システム向けの電子部品の開発や技術提案にも力が注がれる。

 自動車市場への取り組み強化の一環として、電子部品各社の自動車業界向け国際品質マネジメントシステム「IATF16949」認証取得の動きも活発化している。