2023.02.28 AIが認知機能を推定、金融商品取引の適合性チェック 順大やIBMが日本発のアプリ開発

「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」では利用者がタブレットを自分で操作して、AIと会話する=28日、東京都千代田区の三菱UFJ信託銀行本店ビル

 日本IBMと順天堂大学、グローリーの3者は、人工知能(AI)で高齢者の認知機能を推定し金融商品を取引できるかの判断を手助けする「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」を共同開発し、3月1日から三菱UFJ信託銀行で試験運用を始める。声や表情から自然なデータで金融商品を勧められるかの適合性判断を支援する。脳の健康度に基づいた金融商品適合性システムは日本初という。

 金融商品取引法では、顧客の知識や経験、資産状況、購入目的などを確認した上で、顧客に合った商品を勧めることが義務付けられている(適合性の原則)。一方、認知や判断などの能力は加齢と共に低下する傾向にあり、認知機能に配慮したサービスが課題となっている。

 今回開発したAIアプリは、タブレットで撮影した表情と、AIとの会話から認知機能を15段階で推定。金融商品を勧める際の参考情報となる「脳の健康度」として提示し、資産形成の相談に応じる営業社員を支援する。

 三菱UFJ信託銀行は数十人の顧客にAIアプリを実際に使ってもらい評価改善を行い、全店での展開を目指す。

 今後は保険や自動車業界での活用も検討する。

 今回のアプリ開発に向け、順大は2018年から計600症例以上の認知症患者や健常者の臨床試験を実施。通貨処理機や生体認証システムを手掛けるグローリーと日本IBMと連携し、会話や表情から脳の認知機能レベルを推定するAIの共同開発をこぎ着けた。

(電波新聞/電波新聞デジタルで後日詳報します)