2023.04.18 Let’s スタートアップ! ブロードマインド 顧客のライフプランを可視化し、 最適な金融商品を“分野横断的”に提供する

 成長が著しいスタートアップ企業を取材し、新しいビジネスの息吹や事業のヒントを探る「Let’s スタートアップ!」。今回は、生命保険や損害保険、投資信託、債券、株式、住宅ローンなど幅広い金融商品を取り扱い、顧客のライフプランに合わせたソリューションをワンストップで提供しているブロードマインド株式会社。

 保険、証券、銀行、不動産といった分野の金融商品を扱うには、分野ごとの登録許可(ライセンスの取得)が必要だが、同社は複数ライセンスを取得し、分野横断的にサービスを提供している。同社立ち上げの経緯や狙い、サービスの特徴や今後の展望を、広報の冨永さんに聞いた。

プロフィール 冨永冴季(とみなが・さき) ブロードマインド株式会社 経営企画室(広報)
2012年に、ブロードマインドへ新卒2期生として入社。FP(ファイナンシャルプランナー)としてコンサルティング業務に従事したのち、人事部に異動。その後、経営企画室へ異動し、広報を担当。

顧客ニーズに合わせた金融商品を“分野横断的”に提供

 先行き不透明な国内の経済状況に加え、最近では世界情勢の不安定化も加わり、日々の生活や将来に不安を感じる人も少なくないのではないだろうか。さまざまなリスクに備えるために、生命保険や損害保険などの金融商品に興味を持つ人も多いだろう。

 しかし、いざ金融商品を購入しようとしても、保険のことは保険会社、資産運用のことは証券会社など、分野ごとに窓口が異なるため、購入者は別々の窓口から受けた提案をもとに、金融商品の組み合わせを自分自身で決める必要がある。しかし、自身のライフプランに合わせた最適な組み合わせを選ぶのは、簡単なことではない。

 そこで、生命保険、損害保険、投資信託、債券、株式、住宅ローンなど国内約60社の金融商品を取り扱い、顧客のニーズに合わせたソリューション(最適な金融商品の組み合わせなど)を分野横断的に提供しているのが、ブロードマインドだ。

 各分野の商材を取り扱うためには、分野ごとに登録許可(ライセンスの取得)が必要だが、ブロードマインドは複数分野のライセンスを保有している。ライセンスの取得には厳しい審査や煩雑な手続きがあるため、複数分野のライセンスを取得する業者は少なく、ブロードマインドは希少な存在と言える。

 ブロードマインドでは、自らを「ファイナンシャルパートナー」と位置付け、顧客一人一人の要望をもとにライフプランニングを実施。リスクや課題を分析した上で、幅広い分野の金融商品を組み合わせたソリューションを提供するとともに、顧客のライフステージやライフプランの変化に合わせた情報提供やサポートを行っている。

 具体的なサービスとしては、幅広い知識を持った専門家によるワンストップの金融コンサルティングサービス「マネプロ」や、企業従業員向けに金融教育プログラムを提供する「ブロっこり」のほか、一般ユーザーがブラウザー上でFP(ファイナンシャルプランナー)さながらのライフプランニングができる「マネパスhandy」などのデジタルツールも提供している。

ワンストップ金融コンサルティングサービス「マネプロ」のイメージ(画像提供:ブロードマインド)

保険営業で抱いた“ジレンマ”が起業のきっかけに

 ブロードマインドはどのような経緯で設立されたのだろうか。広報の冨永さんは、代表の伊藤清氏が前職で抱いた「あるジレンマ」が起業のきっかけになっていると話す。

 もともと当社代表の伊藤は、ソニー生命でライフプランナーをしており、最年少でエグゼクティブライフプランナーに選ばれるなど、順風満帆にキャリアを積んでいました。

 しかし、知識がつけばつくほど、目の前のお客さまに対して「今回は他社の商品の方が合うのに…」と感じるようなケースが増えていき、大きなジレンマを感じるようになったそうです。

 そうした気持ちの変化がある中で、1996年に保険業法が改正されました。この改正で、もともと保険会社は自社の商品しか扱えなかったのが、他社の商品を扱えるようになりました。また、代理店が複数の保険会社の商品を扱えるようになりました。

 これにより、事実上、生命保険における乗合代理店(複数の保険会社の委託を受ける代理店)の業態が認められたことになります。この背景を受けて、伊藤は、「やりたいことができるかもしれない」と、改正から10年とたたない2002年に独立し、ブロードマインドを立ち上げました。

 当時はまだ乗合代理店をしている会社は少なく、かなり先駆的な存在だったそうです。

ブロードマインドの設立経緯を話す冨永さん

創業当初から中心事業に据えていた「マネプロ」

 現在ブロードマインドが中心事業に据えているのは「マネプロ」という金融コンサルティングサービスだ。これは、創業当初から変わらない「コア事業」だという。

 創業当初は11社の乗合代理店でしたが、現在では、生命保険、損害保険のほかにも、投資信託や株式、住宅ローンや不動産など、約60社の金融商品を扱うようになりました。

 こうした幅広い金融商品を取り扱っていることをベースに、お客さまの要望に合わせ、最適なソリューションを提供するのが「マネプロ」です。

 一般的に、金融商品を購入される方というのは、「万が一自分に何かあったときに、残された家族が困らないようにしたい」だとか、「老後に余裕のある生活をしたいから、今のうちに資産を増やしたい」など、何か人生の目的があり、それを実現するための手段として、金融商品を購入されていると思います。

 しかし、実際にお客さまが金融商品を選ぶ場面がどうなっているかというと、例えば、保険会社さんの窓口では保険商品の話しかできませんし、証券会社さんでは証券の話しかできません。つまり、商材ごとに「縦割り」の状態になっているわけです。

 このため、お客さまが人生の目的を実現するための金融商品を購入する際には、いろいろな窓口に行き、最終的に自分で組み合わせを決める必要があります。しかし金融業界は、情報の非対称性が非常に大きいため、一般のお客さまが自分自身で組み合わせを決めるのはとても難しいと思います。そこで、総合的な判断の役割を担おうというのが、われわれの「マネプロ」というわけです。

 まずはお客さまと話してライフプランを一緒に可視化していき、それをもとに「このタイミングではこの金融商品が合っているのではないか」とか、「今はこういうお金のため方がいいのではないか」などアドバイスをしながら、お客さまが求めるライフプランの実現をサポートしています。

 ちなみに「マネプロ」を利用しているお客さまのボリュームゾーンは20代から40代と、非常に幅広い方々にご利用いただいています。

ブロードマインドのコア事業「マネプロ」の説明をする冨永さん

“お金の健康”が従業員の労働生産性を上げる

 「マネプロ」に加え、現在、ブロードマインドが特に注力しているのが、企業従業員の「ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being)」の実現を支援する「ブロっこり」という金融教育サービスだ。

 「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは、簡単にいうと、経済的な幸せや健康状態を維持していこう、つくっていこうという概念です。その実現を支援するサービスとして提供しているのが「ブロッこり」です。

 これは、いわば企業の従業員さま向けの福利厚生サービスのようなもの。金融リテラシーなどを向上するための教育動画コンテンツの提供に加え、当社FPが専属コーチとして伴走し、コミュニケーションを取りながら、参加者のモチベーション維持にも貢献します。

 私たちが「ブロッこり」を開発した一番の狙いは、従業員さまの「ファイナンシャル・ウェルビーイング」実現を通して、企業全体の労働生産性を上げていくことです。

 今、日本の企業では、従業員への“健康投資”を行うことで生産性の向上や組織の活性化を目指す「健康経営」に関心が集まっています。もちろん体の健康にアプローチして生産性を上げる方法も効果的ですが、一方で、“お金の健康”を支援することでも生産性を向上できるのではないかとわれわれは考えています。

 例えば、ウイリス・タワーズワトソン社の調査(GBA調査「経済的健康・身体的健康とエンゲージメントの関係」)では、従業員が感じている“経済的な心配事”は、“健康上の問題”に対して、生産性に「同等以上」の影響があるという結果が出ています。

 つまり、どちらか一方ではなく、お金と身体、両面の健康にアプローチしていく方が、より効果が高まると考えられるのです。そこでわれわれは、健康経営に取り組んでいる企業さまなどを中心に、「ブロっこり」の利用をお勧めしています。

ブロードマインドが提供している金融教育サービス「ブロッこり」の利用イメージ(画像提供:ブロードマインド)

創業時は「人材育成」で大きな苦労も…

 堅調に成長を続けるブロードマインドだが、創業時にはさまざまな苦労があったようだ。特に「人材育成で大きな苦労があった」と冨永さんは話す。

 当社では基本的に、未経験者と新卒の人を優先的に採用しています。この方針には、代表の考え方が反映されています。

 当社での仕事は、扱っている金融商品を売ることではありません。お客さまのライフプランを実現するために、どんな手段を取るべきか、全体最適を考えることです。一般的な保険営業の経験者が持つ「売るスキル」と、「お客さまからのヒアリングをもとにライフプランを一緒に考え実現するスキル」では、やはりスキルセットが違うと考えられます。

 そのため、未経験や新卒の人を採用して、ブロードマインドのやり方や考え方を一から教えていく方が、結果として、長く定着していただき、ご活躍いただけると考えたのです。

 しかし、われわれの仕事は金融に関することで、お客さまの家計の相談に乗ることですから、当然ながら豊富な知識が必要です。そうした中で、未経験の人を採用しているわけですから、人材の育成には膨大な時間とパワーが必要だったと聞いています。

 設立当初は、代表や役員が手ずから同行し、自身がコンサルティングする様子を見せながら教えていったそうです。

 人数が増えてくると、育成ノウハウを社内に拡散するために、チーム制を敷き、成功事例などを共有する仕組みをつくりました。

 さらにノウハウが蓄積された現在では、教育を専門で行う「教育部」という部署を設け、コンサルタントで活躍したメンバーが、未経験者や新卒の人を半年以上かけてじっくり育成する体制をとっています。

「設立当初は人材育成で苦労した」と話す冨永さん

「金融業界を変えたい」という思いに共感

 冨永さん自身は、どういった思いでブロードマインドに入社したのだろう。

 私は2012年に、新卒2期生として入社しました。もともと人と関わる仕事で、かつベンチャー企業に入りたいなと思っていました。

 ただ、実は学生時代の私は、金融業界で扱っている商材や、その売り方にマイナスのイメージを持っており、あまり良い印象を抱いていませんでした。しかし、そんな「金融業界を変えたい」と、それまでの金融業界にはない新しい事業を展開するブロードマインドと出会い、強く共感し、入社を決めました。

 実際に入ってみると、「相手(お客さま)のことを良くしたい」という精神にあふれる人ばかりで、社風も入社前に抱いていたイメージと違わないものでした。

 入社して11年たちますが、会社の事業が(世の中に対して)「正しいこと」をしているという印象は年々強まっています。

誰もが「お金の心配」をしなくて済む世の中を創りたい

 ブロードマインドでは、どういった未来予想図を抱いているのだろう。

 多くの皆さまがお金の心配をしなくて済むような未来を実現する取り組みを、金融サービス事業に関わる会社として、積極的に進めていきたいと考えています。

 最近、テレビなどで「お金が不安だから、本当は二人欲しいけど、子どもは一人にします」とおっしゃる方もお見かけします。また、お金の不安があるから、「結婚自体に二の足を踏んでいる」という方が少なくないという統計データもあります。

 こうした傾向を、最近は顕著に感じます。だからこそわれわれは、お金に関する不安を解消できるよう尽力していきたいです。

 一人でも多くの方がお金のことを前向きに考えて、(家計を)良い状態にしていけるよう、啓発活動も含め、進めていきたいと考えています。

 最後に、ブロードマインドが必要としているものを聞いた。

 今私たちが求めているのは、「業界、社会を変えたい人」です。

 これまで当社の事業は、金融業界の構造の在り方自体を変えてきたと自負しています。最近は、フィンテックなど新たな業態のサービスも登場していますが、われわれもその一つとなって、今後も新しい金融業界の在り方を模索したいと考えています。そういった取り組みに、一緒に挑戦していただける方を求めています。

 またわれわれは、お金について不安を感じ、将来を諦めてしまう人がいる社会を変えたいという思いも持っています。この思いに共感してくださる方にも、ぜひ参加していただければと思います。

(取材・写真:庄司健一)
社名
ブロードマインド株式会社
URL
https://www.b-minded.com
代表取締役社長
伊藤清
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 JR恵比寿ビル7階
設立
2002年 1月
資本金
575,950,000円(2022年12月時点)
従業員数
244名(2022年12月時点)
事業内容
フィナンシャルパートナー事業(個人の保険、住宅ローン、資産運用、老後資産形成や法人の財務対策など、ファイナンシャルプランニングに関するコンサルティング業務)