2023.04.26 【育成のとびら】〈1〉入社前後のネガティブなギャップについて

約半数が「社会人らしさ」でつまずく

1年目新人の意識調査

 2023年度の新人が入社してはや1カ月がたとうとしている。彼らはデジタルネーティブであり、なおかつコロナ禍で学生生活を経験してきたZ世代の若者たちである。彼らがそれまでの世代と全く異なる価値観を持っていることは想像に難くない。そんな彼らが抱く「仕事の悩み」はどれほど他世代とかけ離れているのだろうか。

 22年7月、当社ラーニングエージェンシーは全国の1年目の新人300人を対象に「入社前後の理想と現実のギャップ」について意識調査を行った。

 まず驚いたのは約3割の新人が既に「離職意向がある」と回答したことだ。入社からわずか3カ月、何が彼らに「辞めたい」と思わせたのか。上司とのコミュニケーションや勤務時間など11の場面を提示し、どこでギャップを感じたかを調査した(図1)。

生活リズムや考え方

 結果、1年目の新人が最もギャップを感じたのは「生活リズムや社会人としての考え方の習得」(70.0%)であり、その半数近くが「想定より難しい」とネガティブな感情を抱いていた。

 さらに「そのギャップをどう捉えたのか」という質問に対しては「会社を辞めたくなった」(25.2%)、「不安に感じた」(23.3%)という回答が多く、学生と社会人の考え方やふるまいのギャップは離職意向や不安を喚起しやすいことが判明した(図2)。

 就職・転職・昇進など、次のキャリアステージに進む移行期を「トランジション」と呼ぶ。そもそもトランジションは求められる役割や行動が変化する不安定な時期だが、中でも就職直後は学生から社会人へステージの変化が大きい分、不安を感じやすい。

 実際、今回の調査でも半数近くが「社会人らしい考え方・ふるまい」を想定以上に求められたという回答が集まり、離職意向や不安につながってしまった。

 厚生労働省は、令和2年度(20年度)の入社3年以内の大卒者離職率を31.2%と発表した。しかし実際には3年どころか入社3カ月で約3割の新人が離職意向を抱いている。企業は早急に1年目新人へのフォローを改める必要があるだろう。

上司との対話に不安

 「背中を見せる」で育てられた世代の上司からすれば「社会人らしい考え方・ふるまい」の習得でつまずくZ世代の価値観は理解し難いかもしれない。しかし、彼らが最もポジティブなギャップを抱いたのは、そんな上司とのコミュニケーションであったことも忘れてはならない。

 Z世代の新人は、トランジションの不安の中で上司との対話を求めている。早期離職予防の鍵は彼らの期待と不安の両方を理解し、フォローしようとする上司の姿勢にあるのかもしれない。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は5月第2週に掲載予定】

 若手社員の育成や離職で苦労している企業が多い。本日からスタートする「育成のとびら」では、若手の本音をひもときながら人材育成について考える。