2023.08.22 生成AI、「雇用の破壊より補完の可能性」 ILOがリポート、女性事務層などに懸念

ILOのサイトから

 国際労働機関(ILO、スイス・ジュネーブ)は21日、生成AIの労働への影響についてリポートをまとめた。雇用が置き換わるというより、業務の一部自動化で他の業務がしやすくなるなど、むしろ雇用が広がるとの見解を提起した。ただ、事務職が最も大きな影響を受ける可能性があり、特に中所得以上の国で女性がより大きな打撃を受けかねないと警告。各国の政策が課題になるとみられる。

 リポートは各国の状況をグローバルに分析。大半の仕事や業界では自動化が部分的にしか進んでおらず、生成AIについて「雇用の破壊ではなく、むしろ仕事の質、特に労働の自律性などが変化する可能性が高い」と指摘。雇用の置き換えよりも、補完の可能性が高いことを示唆しているとした。

 ただ、管理職や営業職のような職種への影響は相対的に低い半面、影響を最も受ける可能性があるのは事務職で、約4分の1の業務が自動化される可能性が高いと指摘した。

 これを反映してジェンダー上の違いも出そうだ。背景には、伝統的に事務職が、各国の経済発展に伴って女性の雇用の受け皿となってきた事情がある。これに伴い、中~高所得の国で、特に事務職の柱になっている女性層がより影響を受けやすいようだ。

 ただリポートは、生成AIの影響が小さいと主張するものではなく、「生成AIの社会的・経済的影響は、その普及がどのように管理されるかに大きく依存する」と提起。「移行を支援する政策が必要」とし、 労働者の声の反映やスキルの訓練、適切な社会的保護などがないと「少数の国や市場参加者だけが恩恵を受けることになるリスクがある」と警告している。