2020.03.12 【テレビ特集】4Kテレビ販促強化 各社、高画質・高音質に磨き

東京オリンピック・パラリンピックを前に大画面高画質テレビの提案にも力が入る

 主要テレビメーカー各社は、今年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に大画面の高精細4Kテレビの販促を強化する。

 18年12月に新4K8K衛星放送がスタートしてから1年が過ぎ、主要各社のテレビは4Kチューナ内蔵が中心になった。各社はより画音質に磨きをかけた製品開発を進めるとともに、映像コンテンツをより楽しめる工夫も施している。インターネット接続によるスマート機能や録画機能なども充実してきた。

 国内のテレビ市場は19年10月の消費税増税に伴う駆け込み需要もあり、9月に販売実績が伸びた。増税後の10月には反動減はあったものの限定的で、年間では台数・金額ともにプラスとなるなど、総じて増加傾向で推移している。

 店頭販売データなどを分析するGfKジャパンによると、消費税増税の駆け込み需要は台数ベースで前年比72%増と大幅に伸びたものの、増税後の10月は同10%減となり、14年の増税時の反動32%減と比べると軽微だったとみる。GfKでは「ラグビーワールドカップの特需が反動減を緩和した」とする。

 この数年は、11年のアナログ放送停波に伴い購入したテレビの買い替えサイクルに入ってきていることも追い風だ。加えて、4K対応のインターネットのビデオオンデマンドサービスや、4K IP(インターネットプロトコル)放送、CATVの4Kチャンネルの充実、19年12月の新4K8K衛星放送の開始に伴う衛星放送の4Kコンテンツも充実してきた。

4Kチューナ搭載

 主要テレビ各社の製品動向を見ても、4Kチューナを搭載したテレビが主流になり、より高画質高音質を追求した機種が増えてきている。

 パナソニックは、4K液晶テレビと4K有機ELテレビの両面で製品群を拡充。新4K衛星放送のダブルチューナを内蔵した4K液晶ビエラをはじめ、4K有機ELビエラ「GZ2000」を訴求している。

 有機ELビエラはパネルのチューニングを含め自社生産を実現したことで、これまでにない高画質な映像を実現した。音質では高級オーディオブランドのテクニクスの技術を組み込み、天井方向に音を出す世界初のイネーブルドスピーカを搭載したことで、360度オーディオにも対応している。

 4K液晶テレビでは4Kダブルチューナを搭載するとともに、ハードディスクドライブ(HDD)、ブルーレイディスクドライブを内蔵したGR770(49V、43V型)を新たに投入。4K対応ブルーレイのウルトラHDブルーレイの再生をはじめ新4K衛星放送の4K長時間録画もできる。

 ソニーは、新4K衛星放送ダブルチューナを内蔵した4K有機ELと4K液晶の「4Kブラビア」を用意し、高画質映像にこだわる幅広い需要に応えている。

 最上位機は独自のパネル制御技術と高解像技術により、あらゆるコンテンツを高画質で再現する。有機ELは画面を振動させて音を出す独自の音響技術を進化させ、究極の画音一体を実現した。

 さらに今年は、グローバルで先行投入していた超高精細8Kテレビ「Z9H」(85V)を投入。あらゆる映像を8Kで再現する超解像技術のほか、4Kと8Kのチューナを内蔵したことで、高精細な4Kと8Kの衛星放送コンテンツをすぐに楽しめる。

 東芝映像ソリューションは、4K液晶と4K有機ELテレビ「4Kレグザ」において、画質と音質を常に進化させている。昨年は新4K衛星放送チューナをいち早く投入してきた。

 今年はクラウドのAI(人工知能)を前面に出し、高画質化にさらに磨きをかけた。まず投入する4K液晶レグザは、AIによりあらゆるコンテンツを高画質化する技術を世界で初めて搭載した。

 これまで有機ELレグザは、映像制作現場といったプロでも活用できる高画質機能を搭載してきた。今年まず投入する4K液晶レグザでは、新開発のレグザエンジンがクラウド上の映像調整データと連携することで、今視聴している映像をより高画質化して映す。今後は、有機ELでもクラウドとAIを組み合わせた仕組みを提供する予定だ。

 シャープは、液晶テレビの開発と販売に注力してきた。特に他社に先駆けて商用化した8Kテレビは幅広い関心を集めた。

 8Kチューナ内蔵の液晶アクオス8Kに加え、新開発の8K画像処理エンジンにより、あらゆる映像を8K相当の画質で視聴できる。さらに昨年からは8Kチューナを搭載しない8K対応テレビを発売した。8Kチューナ搭載モデルと4Kテレビとの間に入る製品となり、これまでよりも8Kを身近に感じてもらい、販促につなげていく。

 三菱電機は、4Kチューナ、HDD、ブルーレイレコーダを内蔵した「リアル4K RA2000」を前面に出している。

 4K放送をそのままBDに記録できるだけでなく録画番組は外出先でも視聴できるようになった。音質面ではカーボンナノチューブを配合した「ダイヤトーンNCVスピーカー」を搭載し音質面でもこだわりを見せる。

 この1年では、主要テレビメーカーだけでなく新規参入企業なども新製品を発売。いち早く4Kチューナを投入してきたピクセラは、チューナ内蔵の4K液晶テレビを充実。ヤマダ電機と独占販売契約している船井電機は、液晶と有機ELテレビを展開する。高画質だけでなく録画機能などが充実している。

 海外メーカーでは、LGエレクトロニクス・ジャパンがAIの活用の幅を広げている。4K有機ELテレビの新製品ではAIによる高画質化と高音質化を実現。

 中国勢では、ハイセンスジャパンが新4Kチューナを内蔵した4K有機ELをはじめULEDテレビなどを訴求している。昨年は中国の家電メーカーTCLの日本法人TCLジャパンエレクトロニクスが量子ドットLED技術「QLED」を採用した4Kテレビを投入した。

ネット接続充実

 各社のテレビはインターネット接続機能が充実。グーグルのアンドロイドTV対応のほか、独自のクラウド連携を図る企業もある。好きな番組を選びやすくなるだけでなく、お勧め番組の表示ができるテレビも増えてきた。スマートTV化は今後もさらに加速しそうだ。

 こうした製品群の充実はテレビの販売にもつながってきている。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計では、19年の薄型テレビの出荷は前年比7・9%増と堅調に推移した。4K対応テレビは同29.6%増と大きく伸びた。今年も引き続き、4Kテレビを中心とした大画面高精細テレビの販売は拡大していくとみられる。

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