2024.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’24展望 照明
付加価値照明の拡大が鍵
IoT化など付加価値追求
変化のスピードに対応
脱炭素実現の切り札でもあるLED照明。社会環境を背景に重要性が増す一方、国内では大幅な成長は見込みにくい状況だ。ストック(既設照明)のLED化に加え、IoT化での付加価値向上、癒やしといった生活環境を豊かにする照明により、存在価値を増すことが求められる。
新型コロナのまん延で施設改修などが中止または延期された影響で、コロナ下の照明市場は苦戦を余儀なくされた。コロナの落ち着きとともに工事案件なども動き出し、現在ではコロナ前の状況に戻りつつある。
日本照明工業会(JLMA)の統計では、2023年4~10月の、蛍光灯などの従来光源を含む照明全体の出荷台数は前年同期比5.2%減となっている。LED照明に絞っても同5.1%減とほぼ同じだ。半面、金額は、物価高の影響で価格転嫁が進んだことにより、全体で1割以上伸びている。
IoT対応など付加価値照明の出荷台数の構成はLED照明の中で22.5%を占め、IoT化が一段と進む住宅用では3割弱に達している。
屋内外のどこにでもある照明は、なくてはならないインフラとしてわれわれの生活を照らしている。一方で、明かりに対してこだわりを持つ層は多くなく、価値が理解されにくい製品でもある。
最近ではサーカディアンリズム(概日リズム)を取り入れたLED照明が製品化されているほか、オフィス環境では、制御システムを生かし、時間帯に合わせて白色系から暖色系に光色を変えるといった提案も進む。
明るさや光色が人の健康や集中力などにも影響を与えるため、「照らす」だけではない価値をより明確に提示し、照明の重要性が理解されれば、付加価値の高い照明の販売にもつながるはずだ。
照明は単価アップが難しい半面、半導体技術がベースとなるLEDが主流となったことで、他機器との連携はしやすくなった。さまざまな機器でIoT化が進む環境を照明も活用し、単体にとどまらない提案が求められるところだ。
それは単にスマートフォンから操作できるといったことではなく、センサー技術やAI(人工知能)を生かすことも視野に入れたものになるだろう。
照明の多くは、天井など高所に設置されている。オフィスを見回せば、天井に設置された照明が等間隔で照らしているのが確認できるはずだ。これはほかの製品にはない特徴ともいえ、この好立地を生かし、これからは存在価値をもっと発揮していくべきだ。
脱炭素、サステナビリティー(持続可能性)、AIなどさまざまなキーワードがめじろ押しの社会環境は、変化するスピードも目覚ましい。アフターコロナも2年目を迎え、ライフスタイルや価値観はさらに変わっていくだろう。照明各社には、トレンドに乗り遅れず、製品開発などで機敏な対応が一層求められる。