2024.01.18 【情報通信総合特集】2024市場/技術トレンド サポートサービス

保守技術者は日々技術力の研さんに努め、システムの安定稼働を支援している(写真は東芝ITサービスのCSコンテスト)

拠点網生かした支援サービス加速
全国規模で一括対応

 IT(情報技術)システムや設備などの保守運用を手掛けるサポートサービス各社は、全国に設ける保守拠点網を生かした支援サービスを加速させる。企業や社会を支えるITシステムを安定して稼働させる要望は増えている。半面で昨今は労働人口の減少などにより、品質の高い保守支援ができる企業が限られてきているのが実情だ。そこで全国規模で保守対応できるサポートサービス企業への期待が従来以上に高まってきている。2024年はサポートサービス企業の活躍の場がさらに広がりそうだ。

 企業や官公庁などのITシステム環境は複数のメーカーやベンダーのシステムが入り組んで構築されている。同時にクラウドへの移行が進んでいることもあり、従来以上にシステム環境は複雑になってきている。加えてサイバー攻撃なども巧妙化しておりセキュリティー対策を同時に進める必要もある。こうした課題にワンストップで対応できるのがサポートサービス各社だ。

 最近は、IT機器を提供するメーカーやシステムベンダーも煩雑になる保守対応に課題を抱えているところが多く、保守運用の委託を検討する企業が増えているという。特に外資系ベンダーなどは国内に保守拠点を持たないため、全国規模で一括の保守対応をするサポート企業に委託するケースも増えつつある。

 ITサポートサービス企業側も一括保守の請負は歓迎だ。メーカー系の保守サポート企業は、従来型のIT機器保守が減少傾向にある半面で、全国の拠点網を維持していく必要があり拠点稼働率を高めていきたいという課題を抱えている。

 以前から各社はメーカーを問わずに保守対応するマルチベンダー保守を強化し、ユーザー企業の保守を一括で請け負う取り組みを進めていた。コンタクトセンターやセキュリティー運用センター(SOC)を配置して全方位で対応するところも多い。この数年はIT機器以外の保守を請け負う企業も増え、医療機器や設備関連の保守を請け負う事例も出ている。

 この一年のメーカー系サポートサービス企業の動きをみると、ベンダーなどと一括した保守請負契約をする事例が増えてきた。とくに外資系ITベンダーの機器の保守を全国一括で対応する案件が各社から出てきている。さらにSI(システム構築)企業やIT系の商社などと丸ごと契約をして全国対応する事例も増えつつある。

 実際に日本に進出を試みている海外企業は保守対応を課題にしているところが多い。地域で個別に保守企業と契約する手間などもあるため、「全国拠点を持つサポート企業との契約を検討するところが増えている」(サポートサービス企業首脳)という。24年以降は一括保守対応の動きがさらに出てきそうで、各社も提案に力を入れていくとみられる。

 ITサポート各社は、メーカー系ではNECグループのNECフィールディングをはじめ、富士通グループの富士通エフサス、日立製作所グループの日立システムズ、OKIグループのOKIクロステック、東芝グループの東芝ITサービスなどがあり、そのほかもSI企業系のサポート企業もある。いずれも全国の保守拠点網を生かしたサポートを前面に出している。

 各社が取り組むのはマルチベンダー保守だ。この一年では外資系ITの一括保守請負の事例が増え、NECフィールディングやOKIクロステック、東芝ITサービスなど、各社で案件が出てきた。全国で安定して保守品質が担保できることから、各社とも「今後は一括保守の案件がさらに増えてくる」と期待を寄せる。

高度な保守対応に向け保守部品管理などの最適化にも取り組む(写真はNECフィールディング)

 一方、IT以外の領域ではOKIクロステックやNECフィールディングが医療機器の保守を拡大。NECフィールディングは資格が必要となる冷蔵機器の保守などにも力を入れる。ただ、各社の動きをみると、これまではIT、IT以外にかかわらず保守案件を獲得する姿勢だったが、この一年はむやみに拡大せずに選択と集中をするところが増えてきた。高い品質で保守対応するために戦略を見直しているとみられる。

 高品質な保守対応をするためのDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進んできた。各社は保守技術者を支援する仕組みづくりを進め、スマートフォンやタブレットを使ったデジタルカルテの導入をはじめ、技術者の自動ディスパッチ(派遣)の仕組みを導入し、最適な保守対応を実現し始めている。スマートグラスなどを活用した保守支援や24時間365日の監視体制も強化されている。保守部品の管理や倉庫の最適化に取り組む動きも出てきた。

 この一年では人工知能(AI)の活用も進んでおり、限られた人員の中で高度な保守対応を実現しようとしている。マルチベンダー保守を高品質で行うためにはデジタル技術の活用は不可欠になっており、保守支援システムの高度化は今後もさらに加速するだろう。