2024.01.25 【新春インタビュー】アイ・エス・ビー 若尾一史社長

経験を糧にプライム事業拡大へ

 -経済環境は、緩やかに回復しておりますが、資源コストなどの上昇もあり、景気の先行きは不透明です。こうした中、2023年度(12月期)業績は、上方修正された計画も上回り、好調ですね。

 若尾 国内のIT市場は、DX(デジタルトランスフォーメーション)がけん引して成長を続けております。当社もDXの流れにうまく乗れているのかなと思います。

 23年度は「中期経営計画2023」の最終年度です。昨年4月に、計画を上方修正しました。第3四半期までの累計ですが、前年より売上高は12%、営業利益は22%伸ばしております。通期も計画を達成できる見込みです。

 まだまだ課題もありますが、取り組んできた営業の強化、プライム事業の拡大が成果につながっています。

 -営業の強化は、具体的にはどのようにやられたんですか。

 若尾 当社は、事業部主体の会社でしたが、事業部から優秀な人材を営業にシフトし、技術の専門知識を生かして営業をサポートするFAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)人員を強化しました。

 こうした営業改革の成果が出る一方、強化しているプライム事業では、成功したプライム事業もあれば、そうでないものもあります。DX需要でプライム案件は増えていますが、こなし切れておりません。当社は、これまでシステム開発の受託が多く、プライム事業の経験があまりありませんでした。リソース不足だったり、コミュニケーション不足だったり、また、予算化の仕方など管理の問題や、業務面の課題など克服すべき点も少なくありません。いろいろな経験を糧に、プライム事業の強化に取り組んでいきます。

 -主力事業の進捗(しんちょく)状況はいかがですか。

 若尾 モビリティは、車載のEV(電気自動車)系やメーター系を中心に伸長しています。自動車関連は、案件は非常に多いのですが、リソースが課題です。

 ビジネスインダストリーは、DX需要に伴う民間企業の基幹システムの刷新需要が堅調です。医療分野もDXが本格化しており、クラウド型診療支援システム、超音波、MRI診断装置システムなどが非常に好調です。

 エンタープライズは、官庁・自治体も堅調ですが、NISA対応システムなど特に金融系は好調です。主要顧客からの受注が計画以上に増えています。

 プロダクトは、MDM(モバイル・デバイス・マネジメント)製品などリカーリング製品の売り上げが大きく伸びています。モバイルデバイス管理の「VECTANT SDM」、建設現場用カードリーダーの「EasyPass」、入退室管理システムの「ALLIGATE」の3製品で、毎期30%超の伸び率で増収に貢献しています。

新プロダクトブランド立ち上げ

 -中期経営計画2023では、「顧客開拓、有望分野の拡大」「ソリューション事業の創出」「グループ経営強化」に取り組まれてきました。今年からの新中期経営計画にはどう臨まれますか。

 若尾 これまで安定した事業基盤と戦略的なM&Aで成長してきました。特にこの3年間で、業績を大きく伸ばしてきています。当社の強みは、幅広い事業領域とワンストップサービスで、コンサルティングから導入後の保守まで提供していることです。また、グループ会社合わせ2000人を超えるエンジニアを抱えていることも強みです。新しい技術の登場や市場の変化など事業環境も変わってきています。また、事業の拡大に伴った管理体制の強化、次世代リーダーの育成なども課題です。どのような状況にも対応でき、成長できる態勢をつくる必要があります。新中計では将来のさらなる成長に向けての基盤づくりに力を入れます。

 -事業体制面の強化は、具体的にはどう取り組まれますか。

 若尾 当社はプレーイングマネジャーが多く、成長をけん引してきました。しかし、急成長の過程でひずみも出てきました。プライム事業などでは管理体制の課題も出てきています。規模も大きくなってきており、将来の成長を考え、ここでもう一度足元を固めたいと思っています。

 この1月1日付で、事業部門の管理体制の強化および事業拡大を図るため、事業本部の体制を刷新しました。これまでのモビリティソリューション事業部、ビジネスインダストリーソリューション事業部、エンタープライズソリューション事業部の3事業部体制を6事業部に分割し、よりきめ細かく事業管理できる体制にしました。また、よりDX促進を加速するため、DX推進室を直轄から事業本部に移しました。

 -ソリューション事業の強化とともに、プロダクト事業の強化も成長の鍵を握っていますね。

 若尾 当社のシンボル的な自社開発製品やサービスにも積極的に取り組みます。プロダクト事業を強化するため、事業本部の中に、プロダクト統括部を新設しました。毎年、新規事業の大会を開催していますが、社員の開発意欲は高いですね。良いものには、積極的に投資していきます。

 また、今回、プロダクト事業の拡大、プロダクトのブランド力強化のため、ブランドコンセプトサイト「FiT TOWN~まいにちの仕事をちょうどよく~」を立ち上げました。新ブランド「FiT TOWN」の立ち上げに伴い、ブランドコンセプトサイトを開設、コンセプトや当社の思いを紹介していきます。今後、プロダクト製品は、「FiT○○」というように「FiT」をブランド名に使用していきます。

 当社は「卓越した技術と魅力ある製品・サービスで心豊かに暮らす笑顔溢れる社会づくりに貢献」をミッションに掲げ、さまざまなお客さまのIT課題の解決に貢献してきました。新ブランドメッセージには、こうした思いも込めています。

 -グループ経営を原動力に成長されていますが、グループ経営強化については、いかがですか。

 若尾 過去、戦略的M&Aを実施し、現在、グループ会社は、国内7社と海外1社の8社です。各社は、それぞれ強みを持っています。今後は、グループでワンストップ対応できるなどシナジー効果をもっと出していきます。また、ソリューションパートナーとも連携を強化していきます。M&Aは、当社グループにないものを持っているところとの補完的な連携を目線に今後も取り組んでいきます。グループ各社の役割、特色も明確にし、連携をさらに強化することで、ISBグループとして成長を目指していきます。

 -生成AI(人工知能)の登場など目覚ましい技術の進展の一方、IT人材不足などがIT業界の課題となっております。人材面では、どう取り組まれますか。

 若尾 当社は、技術者集団を目指しています。エンジニア数も、中期経営計画2023開始前の19年度比で20%増加するなど着実に増えています。先端技術者の育成、確保とともに、人材面の底上げにも取り組みます。昨年から、クラウドの技術資格取得に会社を挙げて取り組んでいます。今年は、さらにレベルを上げると同時に、クラウド以外にも広げていきます。今後は、資格者の数なども公表していきたいと考えています。

持続的成長に向けての基盤づくり

 -ベトナムでオフショア開発に積極的に取り組まれております。今後、海外事業はどう展開されますか。

 若尾 海外展開には、当然、力を入れていきます。オフショア拠点のISBベトナムを上手に活用し、ASEAN以外にも欧州、米国でも展開したいですね。当社の技術や海外のソフトウエアのニーズをよく調査し、当社独自の進出あるいは連携を検討していきます。

 -「夢を持って夢に挑戦」を企業理念に掲げられております。どのよう会社を目指されますか。

 若尾 「夢を持って夢に挑戦」は、創業者の言葉です。中期経営計画2023では、Mission、Vision、Valueを定め、「新しい一歩~move up further~」を掲げました。新生ISBグループ創出に向け、今までの50年のさらなる進化と新たな領域への挑戦で、より多くのお客さまにソリューションを提供できる企業を目指してきました。

 中期経営計画2023の事業目標は達成できましたが、新たな課題も出てきました。新中期経営計画は、10年後を見据え、非常に重要な3カ年になると思っています。単に売り上げ、利益を上げるだけでなく、永続的な成長を続けていくためには、人づくりを含め、しっかりとした基盤をつくっていくことが重要です。社員のエンゲージメントを高め、ISBグループは、何を目指しているかがすぐ分かるようなブランディングも強化していきます。ESGやSDGsを通じて、社会課題を解決する企業として成長を目指します。

 3月の定時株主総会で、会長が相談役に就任しますので、社長としての責任はますます重くなりますが、新3カ年計画は、やり残しがないよう全力で取り組みます。

(聞き手は電波新聞社代表取締役社長 平山勉)