2024.06.21 【やさしい業界知識】電子レンジ

普及率が9割を超える

単機能とオーブンの2タイプ

 電子レンジ(単機能レンジ・オーブンレンジ)は、家庭でおいしく、簡単に調理したいというニーズに支えられ、安定した需要がある。キッチン・調理家電製品の中で、冷蔵庫や炊飯器と並び、普及率が9割を超えた、必需品的な家電となっている。

 近年、家庭で料理を作る機会が増えているため、電子レンジを活用する機会も増えており、食材の温め、いわゆるレンジでチンする利用から、本格的な調理まで幅広く使いこなすユーザーも増えている。

 日本の電子レンジの歴史は、1962年にシャープ(当時早川電機工業)が国産初となる量産品の業務用電子レンジを発売したのが始まり。

 電子レンジの主要部品であるマグネトロンからマイクロ波を発生させ、食材の分子を励起(振動)させることで摩擦熱を起こし、加熱する。

 電子レンジ市場では、この温め直しのみの単機能レンジと、ヒーターや過熱水蒸気など複数の熱源で加熱するオーブンレンジの2タイプがある。

 オーブンレンジは複数の加熱源があることから、単機能レンジより多彩な加熱調理ができ、幅広い料理メニューをこなせる。

 豊かな食生活を支えるため、内食化が進む今では電子レンジの主役となり、日本電機工業会(JEMA)の年間出荷台数では65%(2023年度実績)を占める。

30リットル型が主流

 庫内の容量別では、一度に同時調理しやすい大型の30リットルタイプが主流となっているが、近年では単身世帯や少人数世帯も増加しているため、26リットルや23リットル、あるいは18リットル以下の単身向けといったラインアップも増えそうだ。

 一方、単機能レンジは、〝チン〟するだけで簡単に食材を温められ、レンジ加熱だけでおいしく仕上がるレトルト食品も豊富なことから、春先に高まる新生活・シングル需要などで根強く売れる。

 最近の電子レンジ全体の出荷台数は、コロナ禍が始まった20年度に3年ぶりのプラス成長となり、JEMAの統計では前年度比8%増の358万3000台を記録。引き続き21年度も好調で、同1.5%増の369万1000台だった。ただ22年度は同4.5%減の352万4000台、23年度は同10.3%減の316万台と2年連続してマイナス成長にとどまっている。

 JEMAの見通しでは、24年度もほぼ23年度と同水準の推移とみられている。

家事省力化に貢献

 共働き世帯の増加を背景に、アフターコロナの段階を迎えても、家事省力化へのニーズは根強い。

 今後も、商品開発のポイントは時短・省手間かつ、おいしく調理できる加熱機能の進化だ。

 センシング機能を強化し、冷凍食品や常温の肉、野菜など食材の種類や大きさも気にせず、ボタン一つで最適に加熱し自動調理するなど、手間を省いておいしく仕上げる機能の開発が活発だ。

 近年、オーブンレンジではIoT化も加速し、食材の宅配などさまざまな外部サービスと連携するほか、クラウドからのメニューダウンロードで、後から欲しいメニューを増やせるなど、くらしに寄り添う〝食〟全体に対するソリューションが深化している。(毎週金曜日掲載)