2024.07.12 【電子部品技術総合特集】電子部品メーカーに技術関連アンケート 電波新聞社まとめ

 電子部品メーカー各社は、今年度も積極的な研究開発活動を推進する。電波新聞社がこのほど実施した、主要電子部品メーカー対象の「技術関連アンケート」(回答32社)によると、2024年度の研究開発費計画は多くの企業が前年比増額を検討。新製品開発の重点分野は、自動車関連を筆頭に通信インフラ、データセンター関連、医療機器/ヘルスケア、新エネルギー関連などの分野が重要視されている。現在の産機市場での在庫調整局面は今年度下期中に終了すると予測する企業が多い。AI(人工知能)の業務への活用も徐々に進んでいることが浮き彫りとなった。

2024年度の研究開発費計画 10社が「2桁以上の増」と回答

 2024年度の電子部品開発費計画では、多くの企業が積極的な計画を打ち出している。回答28社中、約4割の11社が前年度に比べて「増」と回答し、うち10社は「2桁以上の増」と回答した。

 最も多かったのは「横ばい」の14社だが、「減」としたのは3社にとどまった。電子部品市況の好転が見込まれる中、開発費についても積極姿勢がみられる。(グラフは5面参照)

需要分野別の新製品重点開発分野 自動車関連、通信インフラ…

 24年度の新製品開発における重点分野(複数回答)を聞いた。最も多かったのは昨年同様に「自動車関連」で24社。次いで「通信インフラ」が18社、3番目は「データセンター関連」の16社となった。以下、「医療機器/ヘルスケア」「新エネルギー関連」「FA・制御関連」と続いている。

 電子化/電動化が進む自動車は、多くの部品メーカーが最重点分野の一つに位置付けている。通信インフラは、5Gが本格化し、6Gに向けた研究開発も進む。

 データセンター関連は、生成AIの普及開発が需要増と技術革新を促進していくことが見込まれる。

 医療機器/ヘルスケアも、IT・エレクトロニクス技術との融合により、成長が見込まれている。新エネルギー関連は、脱炭素要求の強まりにより、いっそう重要性が増している。

海外での設計・開発機能 最も多かったのは「生産技術開発」

 海外での設計、開発機能に関する質問(複数回答)では、最も多かった回答は「生産技術開発」の14社だった。これに「新製品開発」13社、「ユーザーへの技術サービス」12社が続いた。市場のグローバル化への対応や海外有力顧客への技術サポートなどのため、海外での技術体制構築は重要性を増している。特に近年は、海外での人手不足や人件費高騰への対処のため、海外製造拠点の自動化・スマート化が重要度を増しており、現地の生産技術力向上が重視されている。

 海外での電子部品設計開発機能を強化している企業も多い。

M&A/アライアンス/産学共同 産学共同、「行っている」が85%

 各社の研究・開発に関するM&A(企業の合併・買収)やアライアンス、産学連携への取り組みを聞いた。

 「産学共同の研究・開発」について尋ねたところ、回答28社中、計24社が「行っている」と答え、全体の85%を占めた。

 「研究・開発におけるアライアンス」では、回答27社中、「あり」と回答した企業が計18社と3分の2を占め、うち8社は「国内外いずれの企業ともアライアンスがある」と答えた。

 「研究・開発におけるM&Aの取り組み」(複数回答)は、「国内企業の買収実績がある」が14社、「海外企業の買収実績がある」が2社、「実績はないが良い案件があれば検討する」が4社だった。

新製品販売比率 24年度計画で最多は「10%未満」

 売上高に占める新製品比率の実績・計画を聞いた。

 23年度実績は、回答24社中、最も多かったのは「10%未満」の11社。一方、「20%以上」と回答した企業も計8社に達し、うち3社は「30%台」と回答した。

 24年度計画では、回答22社中、最も多いのは「10%未満」の7社だったが、「30%以上」の企業も5社に達した。

生産・開発体制の見直し・強化について 「見直しを行う」が約3分の2

 米中摩擦の激化や地政学リスクの高まり、円安などを踏まえた生産・開発体制の見直しについては、回答28社中、約3分の2の18社が「見直しを行う」と答えた。

 「見直しを行う」と回答した企業に対し、具体的な見直し内容を質問した(複数回答)。回答18社で、最も多かったのは「生産拠点のグローバルでの分散化強化」、次いで、「サプライチェーンの見直し・変更」「国内生産体制の強化」となっている。

 グローバル体制拡充や最適化を進める上で「今後生産比率を高めるエリア」(複数回答)については、最も多かったのは「東南アジア」の15社。次いで「日本」9社だった。

 一方、グローバル体制拡充や最適化を進める上で「今後生産比率を縮小するエリア」(複数回答)は、回答10社で「中国」が8社と圧倒的に多かった。

自社業務へのAI活用 「活用準備進めている」が11社

 自社の業務へのAI(人工知能)の活用状況を聞いた。

 「自社業務へのAI活用の有無」を尋ねると、回答29社中、「活用を始めている」と答えたのは全体の約3分の1の10社。「活用準備を進めている」企業は11社に達した。

 「活用を始めている」と回答した企業に対して「具体的な活用の内容」(複数回答)を聞いたところ、回答10社と母数は少ないが、「工場の生産性向上や品質向上」と答えた企業が最も多かった。

アンケート回答企業一覧

 ▽I-PEX▽旭工芸▽朝日ラバー▽アルファ・エレクトロニクス▽アルプスアルパイン▽イリソ電子工業▽SMK▽NKKスイッチズ▽オータックス▽岡本無線電機▽岡谷電機産業▽京セラ▽サガミエレク▽指月電機製作所▽スミダコーポレーション▽セイコーインスツル▽双信電機▽大真空▽TE Connectivity▽トーキン▽ニチコン▽日清紡マイクロデバイス▽日本ケミコン▽日本航空電子工業▽日本シイエムケイ▽日本電波工業▽ヒロセ電機▽北陸電気工業▽ホシデン▽ミネベアミツミ▽メイコー▽山一電機。(32社・五十音順)