2024.07.12 【育成のとびら】〈29〉2024年新卒社員の考える“理想の上司”は 「間違いを指摘してくれる」
「理想の上司」と聞いて、誰を思い浮かべるだろうか。
悩んだ時に親身に話を聞いてくれた過去の上司、厳しい戦いを勝利に導く名将を挙げる人もいるだろう。Z世代ならば、周囲に希望を与えるアニメの主人公かもしれない。
当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所が2024年3月28日~4月11日、2024年入社の新入社員4227人を対象に行った「新入社員意識調査」で、「自分のキャリアアップにつながる理想の上司」について聞いたところ、最も多かったのは「間違いを指摘して正してくれる」で57.4%だった(図)。
「自分のことをよく見てくれ、声をかけてくれる」(41.2%)、「具体的に手順を細かく教えてくれる」(40.6%)、「仕事やキャリアの悩みを相談できる」(40.2%)などを抑えてのトップだった。
褒めた方が良いのではないかと思いがちだが、「どんな時でも褒めて伸ばしてくれる」と答えた割合は19.1%で、「間違いを指摘して正してくれる」の3分の1以下だった。
相談機会がほしい
「キャリア形成支援について会社に期待すること」について質問したところ、「上司に相談できる機会をつくってほしい」(56.0%)が最高で、「キャリア形成についてのセミナーや勉強会などを開催してほしい」(35.4%)、「上司以外の社員に相談できる機会をつくってほしい」(34.2%)と続いた(複数回答)。
この二つの回答結果から、新入社員たちがキャリア形成において、上司の指導やサポートに高い期待を寄せていることがうかがえる。
指導方法に悩む
コンプライアンス(法令順守)を徹底する意識が高まる中、新人・若手の指導方法に悩んでいる社員も多いだろう。「厳しい指導をしたら、すぐに辞めてしまうのでは」「パワハラと言われないだろうか」という不安から指摘をためらいがちだ。
Z世代の新入社員たちは自分の成長のために、上司や先輩からのフィードバック(良かった点の評価による成長支援と、問題点の指摘による行動改善支援)を切実に求めていることはアンケートからも明らかだ。ただし、彼らが欲している指導やフィードバックは、パワハラや根性論とはかけ離れたものであることは言うまでもない。
心理的安全性が確保された環境下で、客観的な事実に基づいた指摘や、次の成長につなげるためのサポートを求めている。
しかし、現在の管理職や先輩社員たちの中でそのようなフィードバックや指導を受けてきた人は多くないのが実情だ。
自身の経験から正しいスキルを身に付けるには限界がある。新入社員が成長できる環境を整えるためには、まず管理職や先輩社員のスキルアップに対する組織的な支援が欠かせない。
「どんな企業からも評価されるキャリア・経験を積みたい」「成長できない環境ならば転職しよう」と考える新入社員が多い中、管理職の指導スキル向上にどう取り組むのかで組織の未来の在り方が変わってくるのではないだろうか。
次回からミドルキャリア(中堅社員)について取り上げる。「育成の空白地帯」と呼ばれる中堅社員の悩みと育成課題を考えていく。
(つづく)
〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉
【次回は7月第4週に掲載予定】