2024.07.26 【育成のとびら】〈30〉育成の空白地帯・中堅社員の不安 トップは「自分の知識・スキル」

 最近の新入社員や若手社員の特性、あるいは理想の管理職像といった話題は、メディアなどでもよく取り上げられる。一方で、企業の中核をなす、いわゆる「中堅社員」については話題に上りにくい。

 この中堅社員に当てはまる人たちは、新入社員、若手社員、管理職のどれにも当てはまらないというニュアンスで「ヒラ社員」と呼ばれることも多い。しかもこの階層における仕事の実態や悩み、試練の乗り越え方についての調査や分析は少ない。

 定型業務を一通りこなせる「一人前」と見なされることが多いことも背景にある。そのため、研修などの育成プログラムを受ける機会が著しく減少してしまう傾向が強く「育成の空白地帯」とも呼ばれている。

 当社ALL DIFFERENTでは社会人5年目~11年目で役職のついていない社員を「ミドルキャリア」と呼び、仕事においてどのような不安を抱えているのか、組織はどのように成長をサポートすべきかといった観点からデータの蓄積や分析に力を入れている。

 さまざまな業務やプロジェクトを推進する中核となることが増えるミドルキャリアの仕事の悩みや乗り越え方を分析することは、組織力向上に大いに貢献すると考えるからだ。また、20代後半から30代が中心のミドルキャリアはメンタルヘルスの不調を抱える割合も高い年代でもある。

 結婚や子育てなどのライフステージの変化を迎える人も多く、さらには転職活動が活発なステージでもあり、企業がエンゲージメント(愛着心)向上を図る上でも、実態の把握は欠かせないと考えている。

仕事で直面する壁

 ここでは、当社とラーニングイノベーション総合研究所が2023年9月に行った、ミドルキャリア600人に対する調査結果から、彼らの仕事の悩みや不安について探っていく。

 調査では、ミドルキャリアに対し、現在どのようなことに困難や不安(壁)を感じているか、仕事や上司、キャリアや自分の成長など9項目について質問した。

 直面している壁が「ある」と回答した割合をみると、「自分の知識・スキルに不安を感じることがある」が45.7%と最も高かった。次いで「仕事の量が多いと感じることがある」(44.2%)、「上司との人間関係について、苦労したことがある」(38.3%)となった。「仕事を進める上で仕事が難しい・求められる役割が高すぎると感じたことがある」(36.5%)や「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じることがある」(36.2%)も割合が高かった(図)。

 トップだった「自分の知識・スキルに不安を感じることがある」は、当社が社会人2~4年目の若手社員に対して行った意識調査でも各年次の回答割合が最大だった。「知識・スキルへの不安」は若手からミドルキャリアまで一貫した不安であり、最大の壁と呼べるだろう。

 次回以降、ミドルキャリアが直面している壁の中で上位三つの「知識・スキルの壁」「仕事の量の壁」「上司との人間関係の壁」について、それぞれ年次別の比較や受け止め方などの切り口から掘り下げていく。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は8月第2週に掲載予定】