2024.12.27 【育成のとびら】〈40〉就任3年以内の課長、3割超が「自身の判断力」に悩み

 多様な部下を率いてコンプライアンス(法令順守)を強化したマネジメントを行い、継続的に成果を創出する-。

 仕事の複雑化と高度化がより一層進んでいるといわれている近年の管理職に求められるミッションは多い。

 こうした役割を果たすために奮闘する管理職の悩みや課題をより深く捉えるため、当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所は今年5月20日~7月17日、415人の管理職を対象に意識調査を行った。

 調査では、新任・ベテラン・幹部候補と三つのステージに分けて分析した。結果を見ると悩みのトップは全ステージ共通で「部下育成」だったが、2位以下の回答に各ステージで特徴が表われた。

 今回は、課長で就任3年以下の「新任管理職」を取り上げ、その悩みと解決の方向を探りたい。

 新任管理職の2番目に多かった悩みは「自身の判断」で33.6%が選択した(図1)。ベテラン管理職(就任4年以上の課長クラス)の13.8%、幹部候補(部長クラス)の12.1%に比べて突出している(図2)。

 新任管理職の約3人に1人が自身の判断力に悩んでいる背景には、役割のトランジション(転換期)があると推察される。プレーヤーから管理職になると、判断を仰ぐ立場から判断を下す立場へ変化し、さまざまなパラダイムシフト(物事の捉え方の転換)が求められるようになる。

 しかし、実際は昇格の際に前任者や上司から判断軸が十分に引き継がれていない場合も多い。判断軸が分からない状態では当然自分の判断に自信が持てず、戸惑いや悩みに直面することが増えてしまうだろう。

 判断力への悩みは、ベテラン管理職になると半分以下の割合になるため、管理職としての経験の蓄積が悩み解消の助けになると推察できる。しかし、経験の蓄積には時間がかかる上、VUCA(社会環境・ビジネス環境の複雑性が増す中で、想定外のことが起きたり、将来の予測が困難だったりする、不確実な状態)と言われる今の時代は、過去の経験が通用しないシーンも多い。

判断「軸」の共有

 判断力に関する悩みが発生する原因に、組織として「適切な判断とは何か」という軸が明確になっていないことが考えられる。正しい判断軸を明確にし、内部で浸透させるための仕組みを整えることが新任管理職の悩みの解消につながり、現場の判断力を高められるようになる。

 具体的な仕組みとしては、重要な意思決定における根拠の共有やシミュレーションを用いたトレーニングなどが挙げられる。社内外の交渉やトラブル対応、業務の優先順位の設定、組織の戦略策定などの決定において、結論だけでなく、背景や根拠まで共有することで、ほかのメンバーも似たような場面で同じ軸を用いて判断できるようになるだろう。

 ケーススタディーで、状況把握や下した判断が及ぼす影響、検討時のポイントなど、適切なプロセスを学ぶことで、複雑な状況下でも適切な判断を下すスキルを身に付けることができるようになる。

 近年のビジネスシーンでは市場の多様化などが進み、各現場での判断の重要性が高まっていると言われている。組織の生産性を高める上でも、新任の管理職がスピーディーかつ適切な判断を下せる知識とスキルの習得は今後ますます求められるだろう。

 次回は、4年目以上のベテラン管理職の特徴的な悩みを紹介する。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は1月第2週に掲載予定】