2025.01.01 【家電総合特集】暮らし&ホームソリューション’25展望 炊飯器
おいしさ志向を背景に高級IHジャー炊飯器に注目が集まる
おいしさ志向で高級タイプが健闘
内釜や加熱制御技術を進化
炊飯器は、物価高騰や節約志向を背景に家庭で食事をする機会が増えたことや、おいしさ志向を背景に安定した需要があり、ご飯のおいしさにこだわる人に支持されて高級炊飯器が健闘している。
最新の製品はIoT機能の搭載やAI(人工知能)制御によるおいしい炊き上がりを追求し、おいしさ志向に真正面から応える商品開発が活発化。
使い勝手も進化しており、外出先からでも最適な炊き上がり時間を指定して炊くことができるなど、新たな価値創造による需要創出の取り組みも盛んだ。
炊飯器の需要は、2022年度まで3年連続して前年度割れが続くなど、台数ベースでは苦戦が続いている。これには、かつてのインバウンド需要の反動や物価高騰を背景とした節約志向など、さまざまな要因が考えられる。
ただ、おいしさ志向は強く、高級炊飯器への関心が高いため、金額ベースでは健闘している。フラッグシップモデルの機種が伸びているメーカーもある。おいしい炊き上がりにこだわりを持つユーザーは多く、こうしたユーザーが需要をけん引している。
米の消費量は年々減少しているとはいえ、タイガー魔法瓶が実施した調査では9割近くが1日1回以上ご飯を食べていることから、今後も安定した需要が続くとみられる。
日本電機工業会(JEMA)のまとめによる24年度上期(4~9月)の出荷台数は、前年同期比102.0%の208万3000台と、堅調な推移を示している。
炊飯器全体のうち、高火力でお米をおいしく炊き上げるIH式が約73%を占めており、おいしさ志向を背景に上位モデルへの支持は高い。
炊飯器メーカー各社はおいしさを追求する中で、さまざまな素材を用いた内釜の開発や、より高火力に炊ける加熱技術の改良、IHヒーターの進化、さらには最適なプログラミングによる繊細な制御など、ハード・ソフト両面で高度な炊飯技術の開発を活発化させている。
各社が炊飯技術の基本に置くのは、日本人にとって、ご飯のおいしさの原点である〝かまど炊き〟の再現だ。「はじめチョロチョロ、中パッパ…」の炊き方のコツを炊飯プログラムに反映させ、各社ごとのこだわりを持って開発された、さまざまな素材を用いた内釜や加熱制御技術などをフル活用しながら、最適な炊き上がりを追求する。
近年では、産地ごとのそれぞれの銘柄に合わせ、最適な炊き分けを図れるものや、硬さ(軟らかさ)や粘りなど、個人の好みに合わせて最適に炊き上げるものなど、いっそうユーザーのおいしさ志向に寄り添う商品開発にも力が入る。
家事省力化・時短の観点から、米をまとめ炊きして冷凍保存するユーザーも増えている。このため炊飯プログラムに冷凍用ご飯コースを搭載した機種もある。
また、時間がたっても潤いを維持し、いつ食べてもおいしいような加熱・保温制御の進化など、多岐にわたる視点でおいしさを究める開発が続く。