2025.01.09 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2025年の経営戦略 オータックス 富田周敬社長

富田 社長

M&Aで業界再編に取り組む

 2024年は複数のM&Aを実施した。3月にはスイッチメーカーの松久(東京都葛飾区)の電子部品事業の一部継承で合意し、5月には佐鳥電機のトリガースイッチ事業の譲り受けを決めた。10月にはパトライト(大阪市中央区)の端子台事業の事業譲渡契約を締結した。

 パトライトの端子台事業譲受では、パトライト辰野工場(長野県竜野市)を引き継ぎ、同工場の従業員も全て当社が引き継ぐ。同社が手掛けていた春日電機ブランドの端子台や端子台アクセサリーを引き継ぎ、ブランド名は維持する。パトライト辰野工場で生産していた端子台以外の製品も、受託生産の形でそのまま受け継ぐ形となる。

 最近は大手の部品メーカーが製造を取り止めてファブレス化する方向にあるが、当社はそれとは逆の方向に展開する。特に、歴史ある製品、例えば鉄道業界や電力業界、防衛関連業界向けなどの製品を手掛ける部品メーカーが事業を撤退するとユーザーが困るため、そうした企業の受け皿となり、サプライチェーン維持に貢献していく。

 当社の24年度(25年3月期)売上高は前期比横ばいの100億円くらいになる見込みだが、M&Aによる売り上げ積み増しがあるため、既存事業は減収の見通し。産機市場はまだ弱い状況が続いており、需要回復は25年後半くらいから徐々に戻ってくると思う。

 25年度は、事業を譲り受けたパトライトの端子台や佐鳥電機のトリガースイッチなども当社の柱の一つとしていきたい。アルミ加工事業は、商業用テレビや教育用テレビなどの非コンシューマー系分野の開拓に力を入れる。

 生産体制の再編も引き続き推進する。タイ工場への生産移管を順次進めており、23年8月には、タイ第2工場も完成させた。

 25年度から新中期経営計画(3カ年)をスタートする。当社は26年に設立50周年を迎えるため、再チャレンジしていく。生産体制再編を進めるとともに、M&Aによる業界再編に取り組む。

 辰野工場では、日本市場向けの製品を生産する。同工場を有効活用し、将来は辰野工場でのDIPスイッチ生産なども実施したい。