2025.03.24 【育成のとびら】〈46〉評価面談は対話の場 評価者は信頼を構築するコミュニケーショントレーニングを

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 本連載45回目で、管理職が人事評価を行う際に陥りがちな、「直近の出来事に評価全体が左右されてしまう」「部下ごとに極端な評価をつけることにためらってしまう」などの評価エラーの対応策について紹介した。

 評価は人間が行うため、完全に主観を排除することは難しいが、「どのような落とし穴があるのか」という視点でリスクと対応策を学ぶことで、さらに公正・公平な評価が実現する。

 評価を人材育成に生かすのであれば、評価エラーに関する知識や対応策だけでなく、評価面談でのコミュニケーションについても学ぶべきだろう。

部下の成長を軸に

 評価面談にはさまざまな側面があるが、その一つに「部下の成長を軸に対話していく場」としての捉え方がある。

 ただ、評価の判断が正しくても、評価結果の背景や今後の期待を被評価者に正しく伝達できなければ、評価面談を成長の起点にすることはできない。

 結果を一方的に伝達するだけでなく、上司と部下が過去の取り組みや努力、成長について共に振り返り、目標について話すことで、今後の成長の道筋が共有できるようになる。

 また、評価面談は「対話の場」だけでなく、「部下が上司を評価する場」という側面もある。上司から評価の結果やその背景について説明を受けることで、部下は「会社や上司が自分のことをどれだけ見てくれていたか、信頼に足り得るか」と見定めることができるからだ。

 評価面談を、部下との信頼を構築し育成の場とするためには、心構えや知識を学ぶだけでなく、実践的なトレーニングに取り組むとより効果的だ。特に社内の評価者を一堂に集めて、さまざまな評価者に対するロールプレーイングを実施すれば、評価基準の統一化も同時に図ることができる。

低い自己評価には

 ロールプレーイングでは、本人評価が高い場合と低い場合、評価者の評価が高い場合と低い場合の四つの組み合わせを学ぶと良いだろう(図)。

 本人評価が高く、評価者による評価が低い場合(ケース2)、判断の背景や根拠などについてより丁寧な説明などを行わないと、トラブルが起きやすいことは誰もが想像できる。

 一方で、本人評価が低く、評価者による評価が高い場合(ケース3)も注意が必要だ。これは、自己認識と他者からの評価を「4つの窓」で分析する心理学モデル「ジョハリの窓」において「盲点の窓」と呼ばれる領域であり、本人が自身の強みに気づいていないだけで、組織として正当に評価すべき対象となる。

 まずは正しく評価すると同時に、自己評価の考え方に対して他者評価とのギャップに気づかせる働きかけが必要になる。組織への貢献などについて本人が正しい自己認識を持つことが、自己肯定感や自己効力感の醸成だけでなく勤続意向や主体的な行動につながるからだ。

 ケース2・3や、評価者と本人の双方の評価が低い場合(ケース4)のいずれのパターンでも、面談の場で傾聴力や相手に納得してもらうための話し方、相手から信頼される立ち居振る舞いが求められる。

 評価者同士でのロールプレーイングの実践に加え、その様子を観察した第三者からフィードバックをもらうことで、自身の評価の傾向や課題が明らかになり、実際の面談の場での適切な実践につながるだろう。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は4月第2週に掲載予定】