2025.05.14 大阪・関西万博、1カ月で300万人来場 「入場者数は順調」 口コミ、報道が追い風

大阪城からも万博メッセージ(左から3人目がカウパース大阪総領事、右から2人目がヒルス ベスホー・プルッフ駐日オランダ大使)

 大阪・関西万博が開幕して1カ月が経過した。11日までの入場者数は300万人を突破(関係者含む)。9日時点のチケット販売数は約1138万枚となっている。12日に会見を行った日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長は、既に来場した人の口コミやメディアの報道などがチケット購入につながっていると分析した上で、「入場者数は順調に推移している」と語った。万博のコンセプトは「未来社会の実験場」。未来の技術や社会システムの実証実装だけでなく、一人一人の心や人々のつながりも含めた「いのち輝く未来社会」の実験場として、エレクトロニクス業界からも健康や独自技術、環境をキーワードに最新技術が紹介されている。約160カ国が参加する海外パビリオンもイベントや独自展示を実施している。

外国館 オランダが日本との絆強調

 オランダの大阪・関西万博にかける意気込みはすごい。42ある独自建設の外国パビリオンの中で9番目に地鎮祭を行った。2024年3月5日のことだ。

 開幕後の4月21日には早々とディック・スホーフ首相が会場を訪れ、吉村洋文大阪府知事も出席してパビリオンの除幕式を実施した。パビリオンでは「コモングラウンド(共創の礎)-新たな幕開け-」をテーマに、持続可能な未来社会の在り方を提案している。

 オランダの訴求は夢洲の万博会場にとどまらない。在大阪オランダ総領事館は9日から、大阪市と協力し、共創の場を大阪城天守閣の特別展示室に移して「日蘭交流425周年」記念の特別展示を29日まで開催中。オープン記念式典ではオランダ大使館と大阪市の関係者が両国の今後の長い絆を誓った。

 同展にはオランダ国立公文書館所蔵の約30点を含め300点が並ぶ。「両国の歴史関連でこれだけの数の展示品が国内で展示されたのは今回が初めて」と関係者。

 1600年に現在の大分県に漂着した、日本に初めて到着したオランダ船「デ・リーフデ号」の船尾に飾られていた「エラスムス像」の特別展示のほか、長崎市、平戸市の松浦史料展示館などからオランダにゆかりのある史料が寄せられ展示されている。

 大阪・関西万博陳列区域オランダ代表のマーク・カウパース在大阪総領事は、大阪城の展示会場で「過去に始まったことを未来につなげ、万博というコモングラウンドで新たな幕開けを期待したい」と語り、オランダパビリオンへの訪問を呼び掛けた。

環境 水素供給網など新技術実装

 万博会場では、脱炭素社会の実現に向け、水素サプライチェーンの構築やエネルギー・マネジメント・システム(EMS)の提供など、環境に配慮した新たな技術が各所で実装されている。

 パナソニックとNTTアノードエナジーは水素サプライチェーンを実装。NTTパビリオンで生成した水素をパナソニックグループのパビリオン「ノモの国」に供給し、夜間のライトアップに必要な電力を賄っている。

 今回の実装で取得したデータは、NTTグループが保有する通信ケーブルが通る地下トンネル「とう道」などの地下空間を活用して水素を提供する技術の開発に生かす。

 きんでんはEMS「EMS-AI」で、会場施設の快適性と省エネの両立を目指す実証実験に取り組んでいる。AI(人工知能)技術を活用し、空調、発電、蓄電設備の最適制御を行い、省エネを実現する。

 大阪ガスは、会場内で回収した生ごみから発生するバイオガス中のCO₂と、会場内で製造する再生可能エネルギー由来の水素を合成し、都市ガス「e-メタン」を作る実証実験を行っている。e-メタンは、会場内の厨房(ちゅうぼう)などで利用する。

 日本館に併設されている、生ごみを微生物の働きによって分解しバイオガスとして再生する「バイオガスプラント」や、空気中などから回収するCO₂を活用し、一般家庭170件相当のe-メタンの製造を行う。

パナソニックグループパビリオンの外には純水素型燃料電池を展示

ヘルスケア 未来の入浴、眠り体験

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる大阪・関西万博では、電機業界によるヘルスケア関連の出展も目立つ。

 サイエンス(大阪市淀川区)は、大阪ヘルスケアパビリオンで入浴装置「ミライ人間洗濯機」を展示している。首から下は直径約1000分の3ミリメートルの気泡「マイクロバブル」を含む浴槽で、首から上は直径約1万分の1ミリメートルの気泡「ウルトラファインバブル」を含むシャワーヘッドの技術を生かし、身を委ねているだけで全身を洗ってくれる。同時に、背面のセンサーを使用して入浴者の心電図をモニタリングし、よりリラックス、リフレッシュができる空間を提供する。

 同パビリオンではiPS細胞から作られた、自ら動く実物の心筋シートも常設展示している。

未来の入浴を体験できるミライ人間洗濯機。吉村洋文大阪府知事が体験者第1号となった

 パソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE」では、ミネベアミツミが「未来の眠りエリア」で未来の眠りを体験できるベッドを披露している。

 ベッドには非侵襲・非接触で50万分の1の高分解能を有するベッドセンサーシステムを採用。重量を計測できるロードセルと呼ばれる複数のひずみゲージが搭載されており、ほんの少しの肝臓の動きや血液の流れなどを読み取って、体験者の体重・体動・呼吸数・心拍数などを測定する。

 小型で場所を選ばず、振動によって物を動かしたり音を生み出したり、触覚を再現したりできる振動デバイスも搭載。独自のばね構造・減衰構造による微細な振動で、心地良い目覚めを提供する。

 パソナグループのパビリオンでは、iPS細胞や既に実用化されているiPS心筋シートの技術を活用した、iPS心臓を展示。生きた細胞で心臓を作製した。培養液中でiPS心臓が実際に拍動する様子を見ることができる。

未来の眠りを体験できるベッドを出展

先端技術 秘められた力解き放つ

 各パビリオンでは各社の独自技術や先端技術を活用して館内を演出している。

 パナソニックグループのパビリオン「ノモの国」の体験エリアは、来場者の中に眠る感性に気付いてもらうことで自身に秘められた力を解き放つ体験を提供する。同社が培ってきた「ひとの理解」研究に基づく表情・行動解析の技術を用い、体験者の個性や特性が反映された一人一人の可能性やストーリーを「チョウ」をモチーフに描く。

無線タグの情報に基づき異なるストーリーを提供

 館内では無線タグやカメラなどセンシング技術を活用して得た情報から来場者の行動や表情を解析し、一人一人の個性や特性を反映した異なるストーリーを提供する。

 シグネチャーパビリオンの「Better Co-Being」では、人と人、人と世界、人と未来の共鳴を、アートを軸に体験できる。共鳴のキーデバイスとなるのが、村田製作所の「ふしぎな石ころ」だ。

 特殊な振動により、脳にあたかも引っ張られたかのような錯覚を引き起こす3Dハプティクス技術を搭載している。また、位置を検知するLFアンテナを130カ所敷き詰めてある。アプリと接続し、アプリに入力された情報を基に、嗜好(しこう)に応じたスポットへと、ふしぎな石ころがいざなう。

ふしぎな石ころが好みのスポットにいざなう

 NTTパビリオンの体験テーマは「PARALLEL TRAVEL(時空を旅するパビリオン)」。Zone1から3までの三つの異なるゾーンで構成されている。来場者は入場時に写真を撮影するが、Zone3ではこのデータから、来場者の前面スクリーンに一人一人の「Another Me(もうひとりの自分)」を投影。自律的に歩き出し、容姿をさまざまに変えながら、他の来場者のAnother Meと共に希望の歌を奏でる。