2025.05.29 「金融サービスがそろった」 NTTとSBIが業務提携、住信SBIネット銀はドコモ傘下に
NTTとSBIホールディングスが資本業務提携を発表した=29日、東京都千代田区
NTTとSBIホールディングス(HD)は29日、資本業務提携すると発表した。提携の一環として、NTT子会社のNTTドコモは、住信SBIネット銀行の普通株式を公開買い付け(TOB)により取得し、同銀行と三井住友信託銀行と業務提携することも決定。金融分野を中核に幅広い領域での協業を進め、両グループの強みを生かして相乗効果の創出を目指す。
今回の資本提携では、NTTがSBIHDの第三者割当増資を引き受け、2700万株(総額約1108億円)を取得する予定。再生可能エネルギーやWeb3などの分野でも両グループのアセットを活用した協業を展開し、NTTデータグループとSBIグループの金融サービス事業各社とのシステム開発連携も強化する。提携開始は7月17日の予定。
NTTの島田明社長は会見で「デジタル技術と金融サービスの融合を通じ、革新的なサービスを市場に提供したい。両グループのアセットを活用した協業で、社会課題の解決と持続可能な社会の構築に貢献する」と強調。パーソナルビジネス分野の強化や社会・産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)、データ利活用の推進を掲げた中期経営戦略の加速に期待感を示した。
SBIHDの北尾吉孝会長兼社長は「NTTとの提携で、両社の経営資源を活かしたシナジー(相乗効果)創出に大きな期待がある。既存パートナーや顧客との関係を損なうことなく、オープンイノベーションを推進し、顧客中心主義に基づいた利便性向上を目指す」と述べた。
ドコモによる住信SBIネット銀行のTOBは5月30日から開始し、最終的に同行の議決権比率は三井住友信託銀行と50%ずつ保有、2025年第3四半期以降にドコモの連結子会社となる予定。
ドコモの前田義晃社長は「銀行業への本格参入で、ドコモの金融サービスがフルラインアップとなり、スマートフォン一つで貯金、決済、投資、保険、融資、ポイントまで一体的に利用できる」と説明。データ活用による最適なサービス提案や顧客基盤の強化、金融事業の成長加速を目指す方針を示した。
住信SBIネット銀行の円山法昭社長は「今回の提携は我々にとってはプラスの効果しかない。SBI証券との提携関係も維持・強化され、強力なシナジーを今後も続けられるのが今回の枠組みとして決まったことが、最大のポイント」と力を込めた。
携帯各社、金融との連携加速
通信市場の成熟化が進む中、携帯電話大手各社は金融機関との連携を加速させている。
ソフトバンクと三井住友カードは5月15日、キャッシュレス決済やAI、ヘルスケア分野で包括的な業務提携を発表したばかりだ。ソフトバンク子会社のPayPayが中核的な役割を担い、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)全体での連携も視野に入れる。
昨年11月には、みずほフィナンシャルグループ(FG)が楽天グループ傘下の楽天カードに出資し、資本業務提携を結ぶことで合意した。両社は証券ビジネスで協業してきたが、提携クレジットカードの提供やポイントサービスでの連携も深め、互いの顧客基盤を強化するのが狙いだ。
各社とも通信収入の大幅な成長が見込めない中、携帯電話事業の顧客基盤を活用した金融・決済サービスとの融合による「経済圏」獲得に主戦場が移りつつある。