2025.05.23 携帯大手3社、決算で明暗 金融軸に「経済圏」拡大へ

 携帯電話大手3社の2025年3月期決算が出そろった。ソフトバンクは売上高、営業利益ともに過去最高を更新し、中期経営計画の目標を1年前倒しで達成。KDDIも主要事業の成長とローソンの好調により増収増益を維持した。一方、NTTドコモは増収減益となり、明暗が分かれた。各社とも通信収入の大幅な成長が見込めない中、携帯電話事業の顧客基盤を活用した金融・決済サービスとの融合による「経済圏」の拡大戦略が本格化している。

 ソフトバンクは、全事業セグメントで増収増益を達成。25年度に9700億円の連結営業利益を計画していた中期経営計画の目標を1年前倒しで達成し、中計の営業利益予想を1兆円超に上方修正した。

 PayPayは上場準備を開始しており、PayPay銀行とPayPay証券の子会社化を進めるなど金融ビジネスの再編を完了した。宮川潤一社長は「PayPayのリーダーシップの下、銀行・証券サービスの成長を加速させたい」と意気込む。

 KDDIは、新規事業や成長分野への投資を進めるサテライトグロース戦略が順調に推移し増収増益を確保した。

 金融・エネルギー事業は2桁増益を記録し、通信との連携により顧客基盤が拡大。特に「auマネ活プラン+」の累計契約者数が150万人を突破し、通信と金融サービスの一体提供が成果を上げている。

 松田浩路社長は「当社の強みをどう生かすかにこだわり、通信とデータを活用するためにAI(人工知能)の共通基盤となるようなプラットフォームを準備していく」と述べた。

 一方、NTTドコモは前期比1.2%増収となったものの、営業利益は同10.8%減益となった。

 コンシューマ事業では、d払いアプリやdカードといった金融・決済を含むスマートライフ事業が売り上げ・利益ともに2桁成長を示したものの、モバイル通信サービス収入の減少と販売促進費の増加で、コンシューマ通信事業の低迷が続いている。25年度は「変革の年」と位置づけ、26年度以降の大幅な増益を目指す。

 前田義晃社長は「25年度が底。モバイル通信サービス収入が下げ止められるので成長基調をしっかりつくれる」と語り、27年度に過去最高益を目指す意向を示した。

 通信市場の成熟化が進む中、各社は金融・決済サービスとの融合による経済圏の拡大に軸足を移している。ソフトバンクはPayPayを中核とした金融ビジネスの統合を進め、KDDIはau経済圏の拡充とローソンとの連携強化を図る。ドコモは変革期間を経て、d払い・dカードを軸とした金融サービスの拡充に注力する。