2025.07.01 全国初の半導体学士課程、熊本大に志願者急増

半導体人材の育成と輩出に注力すると話す小川学長

 TSMC(台湾積体電路製造)の進出で注目を集める熊本県で、熊本大学が半導体人材の育成強化に乗り出している。県内外の大学や産業界と連携し、教育・研究体制の整備を進めている。

 熊本大学は昨年、工学部に「半導体デバイス工学課程」を開設し、情報融合学環・DS(データサイエンス)半導体コースを創設した。半導体教育に特化した学士課程として国内初で、志願倍率は前年度の2倍から4.7倍へと急増した。新学部には県外からの志願者が9割を占め、全国的な関心の高まりがうかがえる。

 教育面では実践的な講義を重視し、東京エレクトロンやSCREENセミコンダクタソリューションズの技術者が講師を務める「半導体製造装置論」や、県内の半導体産業について学ぶ「地域における半導体」を導入。将来的には企業と連携し、製造データを活用した実験授業も計画している。大学院では東大との連携による実習や遠隔講義も行われる。

 研究面では新棟を整備。既に企業との共同研究に活用されており、2つのクリーンルームを備える。東大、九大、東北大も分室を設け、三次元積層技術の研究を加速。ベルギーのimec(アイメック)や台湾の大学とも連携を強めている。

 6月6日には「熊本大学半導体リスキリングセンター」の開設を発表。社会人向け再教育にも注力し、高度人材の裾野拡大を目指す。

 熊本大学の小川久雄学長は「半導体に特化した学士課程の新設、修士・博士課程の講義・実習も増え、半導体に関する教育が充実してきた。リスキリングセンターも本格的に動き出し、高度半導体人材の育成と輩出に貢献していく」と語っている。

<執筆・構成=半導体ナビ