2025.07.08 グーグルや東大も 半導体の民主化「オープンソースシリコン」 都内でイベント

多くの来場者が聴講したオープンソースシリコンワークショップ

チューリッヒ工科大のフランク・K・グルカナック氏はPULPを紹介したチューリッヒ工科大のフランク・K・グルカナック氏はPULPを紹介した

 半導体の設計・開発から製造までをオープン化しようという「オープンソースシリコン」の取り組みが、世界的に広がりを見せている。こうした動きを紹介する「オープンソースシリコンワークショップ」が東京都内で開催された。

 このイベントは、京都で行われた国際半導体学会「VLSIシンポジウム2025」の登壇者を招いたサテライトイベントで、6月に開かれた。日本ではOpenSUSI(オープンスシ)が主催。産学官の関係者や研究者など多数が参加した。

 冒頭で登壇したOpenSUSI代表理事の岡村淳一氏は、EDA(電子設計自動化)やIPライセンスなどの高コスト障壁を取り除き、誰もが手軽に半導体設計を行える環境の整備が必要だと強調。現在、製造まで含めた体制構築を進めているという。

 ワークショップには、独iHPや伊Chips.IT、スイスのチューリッヒ工科大学、オーストリアのヨハネス・ケプラー大学、米ハワイ大学など世界中の研究者や有識者が参加。後半にはグーグルやPEZYコンピューティングなどの民間企業の専門家も登壇し、オープンソースシリコンを支える最新技術の紹介が行われた。

 iHPは130~250ナノメートルプロセスのPDK(プロセス・デザイン・キット)を公開しており、複数のチップを1枚のウエハーで製造するMPW(マルチ・プロジェクト・ウエハー)のサービスも提供している。チューリッヒ工科大は、PULP(Parallel Ultra Low Power)というオープンソースハードウェアを13年から展開。すでに60以上のASICを設計・公開している。

 イベントの最後には、経営破綻したイーファブレスの元CTOであるモハンムド・カッサン氏がサプライズ登壇し、新たに立ち上げた「チップクリエイト」プラットフォームの構想を紹介した。25年9月には製造支援サービスを開始する予定だ。

 日本国内でも、OpenSUSIや東京大学によるプロジェクトなどが動き出しており、半導体の「民主化」の潮流が加速しつつある。

<執筆・構成=半導体ナビ