2025.06.16 「自動化×現場力」で半導体後工程を活性化 OSAT業界団体の戦略に迫る
林氏は「日本では歩留まりを垂直的に向上させることができる」と現場力を強調する
半導体製造の後工程を受託する企業20社超が結束し、4月に「日本OSAT連合会」を立ち上げた。国内で半導体製造前工程の製造拠点を強化する動きが活発化する中、後工程の業界でも連携の強化に向けて動き出した。日清紡マイクロデバイスの元役員でシニアアドバイザー兼同連合会の事務局長を務める林力氏に、設立の背景や展望を聞いた。
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後工程には人件費がかかるため、その拠点を東南アジアなどのグローバルサウス(新興・途上国)へ移す動きが加速している。日本のOSATは中小企業が多く、海外への顧客流出も進む。会社の規模が小さいうえ、競合同士で横の連携がなく、業界の全体像も見えづらい。
それでも、前工程と同様に後工程の重要性が一段と高まる方向にある。このため横の連携を強化し、OSAT業界を見通せる業界団体の設立に至った。林氏は「このまま指をくわえているままでは危ないと感じた」と語る。
現場力で品質向上
現在、同連合会の会員企業は26社に上り、アオイ電子や米アムコー・テクノロジーの日本法人などが名を連ねる。政策提言や共同研究、広報活動を進めていく予定だ。
中でも焦点を当てる活動が製品の品質向上だ。林氏はDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きに触れながら、「国内OSATは品質管理の最後の砦(とりで)である『現場力』に強みがある」と語る。
近年、後工程の高度化に伴い製造自動化も進んでいる。同連合会もそうした取り組みを推進したい考えだが、それでも現場で働くオペレーターの役割は大きい。それだけに、長年経験を積んだ各社の技術力を「日本の強み」として生かさない手はない。
例えば、検査データを迅速に分析し、前工程にフィードバックすることで、歩留まり(良品率)の向上のスピードを上げられる。
製造設備を短時間で修理したり効率的に管理したりする能力も、豊富な経験を積み上げたオペレーターならではの強みだ。
コスト優位性の獲得
同連合会はコスト競争力の強化にも注力。ここでも現場力による「設備総合効率(OEE)」の向上を生かしたい考えだ。林氏は「自動化などで賃金の差が小さくなる中で、設備総合効率がコストの差になる」と力を込める。
さらに、安定的な生産供給の確保や人材育成なども重視する。特に現場力の維持には教育による下支えが欠かせないというわけだ。
国内のOSAT業界は培った技術力を武器に一定のシェアを確保しているが、開発投資に積極的な海外勢に押され気味なのが現状だ。それでも半導体技術を巡るトレンドを踏まえて林氏は、「後工程が国際競争力の差別化要素になる」と前を向く。
OSAT産業は同連合会の発足を機に、世界市場でどこまで競争優位性を高めることができるか。その成否が日本の半導体再興の鍵を握りそうだ。
<執筆・構成=半導体ナビ>