2026.04.27 データと人の融合で投資判断を支援 GAテクノロジーズ・奥村純執行役員CDO(最高データ責任者)マーケティング本部長

RENOSYで不動産流通を再構築

不動産テック事業を手掛けるGAテクノロジーズは、不動産投資サービス「RENOSY(リノシー)」を軸に、不動産取引のデジタル化とデータ活用を加速させている。物件の仕入れから販売、管理までを一気通貫で手掛け、購入後の運用実績まで蓄積する仕組みを確立した。属人的になりがちな不動産投資の不透明さを、テクノロジーと人による対話で解消し、個人の資産形成手段としての定着を狙う。

流通の分断を解消

 同社の取り組みの中核は、2016年にサービス開始した投資用不動産のマーケットプレイスRENOSYだ。仕入れ、販売、管理、売却の全工程を自社で担う体制を構築した。

 自社で物件を一部管理し続けることで、購入後の収益状況といった実績データを継続的に把握できる。不動産業界は機能ごとに事業者が分かれ、データが分断されやすかったが、同社は流通全体を担うことでデータを循環させる。

 執行役員CDO(最高データ責任者)でマーケティング本部長の奥村純氏は「分業が進む業界は、購入後の情報まで把握できないケースが多い。仕入れから管理まで一体で担うことで実績データを蓄積し、次の戦略に生かせる」と話す。「流通量が増えるほどデータの解像度も上がり、意思決定の精度も高まる」と手応えを示す。

データが営業力を底上げ
 蓄積されたデータは、商品設計だけでなく営業現場の変革にもつながる。面談内容や提案履歴を分析。営業プロセスの標準化を進めている。

 経験や勘に依存してきた営業を、再現性のある仕組みに転換。若手でも一定水準の提案が可能となり、組織全体の底上げにつながる。

 奥村氏は「不動産は顧客ごとにニーズの差が大きく、従来は個人の経験に依存する部分が大きかった。データで可視化することで、組織として知見を共有できる」と説明する。

 営業支援部門とデータ部門が連携し、現場に即した形で分析結果を反映する体制も整えた。「データを示すだけでなく、現場の意思決定まで落とし込むことが重要だ」と強調する。

人とAIの役割を融合
「不動産は日用品のレコメンドとは根本的に異なる」。奥村氏は、高額かつ低頻度な取引の特性をこう指摘する。

 同社は、データ分析と「アセットプランナー」による対話を組み合わせた提案を採る。機械的に物件提案を行うのではなく、担当者が顧客に寄り添い、将来のリスクや収支見通しを説明する。

 「数千万円規模の意思決定になるため、最終的には人が不安や疑問に向き合う必要がある。一方で、データによって判断の質は高められる」。人とテクノロジーの役割分担の重要性を強調する。

投資判断を可視化
 不動産投資は収益構造が見えにくく、心理的ハードルが高い分野とされてきた。同社は運用データや顧客事例を提示し、透明性の向上を進める。

 奥村氏は「資産価値が見えにくい資産だが、データを見れば一定の傾向がある。金利や空室といったリスクも事前に想定し説明できる」と話す。データを基にした説明が、顧客の納得感につながるとみる。

成長戦略と業界DX
 BtoC事業に加え、不動産会社向けSaaS(クラウド経由で提供するソフトウエア)を手掛ける「ITANDI」(イタンジ)をグループ会社として展開している。電子契約や内見予約、申込手続きなど一連の業務をデジタル化し、従来は紙や電話に依存していた不動産取引の効率化を進める。

 ITANDIのサービスは不動産会社の業務基盤として浸透しつつあり、取引プロセス全体のデータを蓄積できる点が強みだ。これにより、賃貸・売買を横断した市場データの把握や分析が可能となり、RENOSYの物件選定や価格設定にも生かされる。

 同社はこうした取引とSaaSを組み合わせたエコシステムの構築を掲げる。国内外での流通拡大とデータ活用の高度化を進める方針だ。

 不動産取引のデジタル化は業界全体の構造変化にもつながりつつある。従来は属人的な判断に依存していた価格形成や需給把握も、データに基づく客観的な評価へと移行し始めている。同社はその基盤づくりを担う存在として位置付ける。

 今後は蓄積データを活用したサービスの高度化も視野に入れる。需要予測や最適な物件提案の精度向上に加え、顧客ごとの資産形成を長期的に支援する仕組みづくりを進める考えだ。

 GAテクノロジーズの売上高は2024年度1898億円、25年度2489億円と拡大が続く。中期経営計画では26年度は3220億円規模を目指す方針だ。一方で、株式や投資信託など他の資産運用との競合も強まる。奥村氏は「不動産を資産形成の選択肢として当たり前にしたい。誰もが理解し、安心して選べる市場をつくる」と語り、テクノロジーによる市場変革に意欲を示した。