2026.08.07 シャープ、「ネイチャーテクノロジー」を神戸の水族館に常設展示 認知拡大へ

アトアでのネイチャーテクノロジー常設展示コーナー「Fragments of Nature」

ネイチャーテクノロジー開発に携わる公文部長(右)、水元研究員(中央)、三角課長(左)
ネイチャーテクノロジー開発に携わる公文部長(右)、水元研究員(中央)、三角課長(左)

ネイチャーテクノロジーがどういう部品に生かされているか、体感的に理解しやすい展示にしている
ネイチャーテクノロジーがどういう部品に生かされているか、体感的に理解しやすい展示にしている

 シャープは、省エネ性や機能性を高めた家電製品の多くに、独自の生物模倣技術「ネイチャーテクノロジー」を活用している。

 無駄や無理がない自然の摂理に学び、暮らしにも環境にもやさしい快適なモノづくりを今後も強力に推進していく。あわせてネイチャーテクノロジーに関する、一般への啓発活動にも力を入れていく方針だ。

 ネイチャーテクノロジーの理解を深められる取り組みの一環として、7月11日に神戸市にある劇場型アクアリウム「AQUARIUM×ART átoa(アトア)」にネイチャーテクノロジーを体感できる一般向けの常設展示「Fragments of Nature」が新設された。

 アトアは、アクアリウムとアートが融合した新感覚の都市型水族館で、それぞれのゾーンには、テーマを表現するシンボリックな水槽を配し、訪れた人々に癒やしと感動を提供。新たな文化施設としての体験価値を創造する施設として、市民から好評だ。

 若年層を中心に、家族連れからシニア層まで幅広い人が施設に訪れ、7月7日には累計来館者数が300万人を超えた。

 アトアは今年、開業5周年を記念して2階にある「ELEMENTS 精霊の森」ゾーンをリニューアル。その一角にネイチャーテクノロジーを体感できるコーナーを設けた。

 生き物の驚くべき能力を学び、暮らしや環境にやさしく、快適なモノづくりを目指すシャープと、生き物の持つ形態・機能・能力のすごさ、素晴らしさを伝えたいアトアは、2025年から共同開発契約を結び、連携を始めた。

 互いの強みを生かし協働する中で、すでに初年度の研究成果が研究論文として受理されたほか、ネイチャーテクノロジーに関わる体験型ワークショップの開催など各種イベントにも取り組んできた。

 アトアへの常設コーナーの設置で、ネイチャーテクノロジーを、より多くの人に身近に感じてもらう活動を強めていく。

多くの製品にネイチャーテクノロジーを活用

 シャープのネイチャーテクノロジーの歴史は長く、08年から研究開発に取り組んでいる。現在ルームエアコンや冷蔵庫、液晶テレビ、ドラム式洗濯乾燥機など10製品以上に搭載され、使い勝手や省エネ性向上に寄与している。

 08年に最初にこの技術を取り込んだのはルームエアコン室外機のファンの形状だ。室外機ファンには、3種類の鳥の翼形状を採り入れている。

 まず、長距離飛行に適した「アホウドリ」の翼の特性を取り入れた。その後、風を巧みにコントロールする「イヌワシ」、高速飛行に優れた「アマツバメ」の翼形状を各所に導入することにより、今では送風効率が20%、消費電力を20%抑制する効果が得られている。

 ネイチャーテクノロジーは自然界の生物全般から、幅広く学んでいる。陸海空にまたがる動物・植物が持つ独特の形状などから、家電製品の効率向上につながりそうな特長を捉え、設計に生かしている。

 アトアのFragments of Natureのコーナーには、九つのネイチャーテクノロジーが紹介されている。来館者が見て、技術が生かされている部品を手に取って触れることもでき、身近に体感できる工夫がなされている。

 展示では、「アサギマダラの羽根形状」を模した、手足が冷えすぎない快適な風を実現する「扇風機のファン」、「ネコの舌の構造」から学び、吸い込んだごみをコンパクトに圧縮する「掃除機のゴミ圧縮ブレード」、「ひまわりの種のフィボナッチ配列」をとり入れ、洗濯ムラを約50%低減する「ドラム式洗濯乾燥機の扉ガラス」などを紹介。

 「冷蔵庫のLEDランプのカバー」には、「シロクマの毛の構造」を取り入れている。シロクマの毛は、無色透明で中が空洞となっており、この構造により光を散乱し、熱を取り込んでいる。これにヒントを得て、まぶしさを抑えながら明るい庫内を実現するランプカバーが生まれている。

 このほかにも、「ラッコの毛づくろい」から毛先の絡まりをスムーズにほどく 「ヘアブラシのブラシ形状」や、「マンタのエラ構造」から、糸くずがするっと取れる「ドラム式洗濯乾燥機の排水フィルター」が実現している。

 こうした工夫がわかりやすく紹介されており、見る人が自然の力に魅了されながら、身近な家電製品にも生かされている事実を学べるコーナーとなっている。

シャープのブランド力を強化

 コーナーで最も目につくのは、「CEATEC 2023」にも参考出品したヒーリングファン「はねやすめ」だ。

 ネイチャーテクノロジーの新たな展開として、生物の形にとどまらず、「動き(運動)」そのものから学ぶという新たな挑戦で、フクロウの羽ばたきを模倣した「はねやすめ」は、その第一歩となるもの。

 同社Smart Appliances & Solutions事業本部要素技術開発センター第一開発部の水元悠里子ネイチャーテクノロジー開発担当研究員は「(アトアでの)展示は、身近な生活の場で使う家電製品に、生き物のすごさ、自然界のおもしろさが入っている驚きを感じてもらえるよう、見て、触って、学んで、楽しめる展示になっている」という。

 今後「ネイチャーテクノロジーは『はねやすめ』のように、生物の動きにも着目して、開発に取り組みたい」(水元研究員)と、技術の深化に取り組む方針だ。

 「ネイチャーテクノロジーの可能性は広い。家電の省エネ・高効率化、機能性向上で価値を高めていきたい」(同)という。

 要素技術開発センター第一開発部ネイチャーテクノロジー開発担当の三角勝課長は「テレビにも、音波を反射するイルカの上あごの骨形状をスピーカーに応用し、前向きの音の放出効率を高めるなどネイチャーテクノロジーを採り入れている。シャープの製品全体へとネイチャーテクノロジー搭載を広げていくことで、さらに認知を高めていきたい」と話す。

 シャープ製品の差別化の大きな要素が、ネイチャーテクノロジー搭載となるよう、技術開発に磨きをかけていく考えだ。

 第一開発部の公文ゆい部長は「ネイチャーテクノロジーの常設展示はこれが初となる。まだ認知は低いので、まずはもっと広くこの技術を知っていただきたい。今後はネイチャーテクノロジーでしかなしえない技術や製品の開発を目指していく」方針だ。