2020.09.18 【ASEAN特集】ベトナム企業や個人に27億ドル相当支援
ドゥ・トゥイー・ホン専務理事
人口9500万人のベトナム。9月11日現在で感染者1059人、死者35人という数字はASEANの近隣諸国と比べて少なく、驚異の目で見られている。それでもベトナムは産業面で世界のサプライチェーン(部品供給網)の破壊により苦しんでいる。
ベトナムを代表する産業が電子工業。ここ数年驚異的なペースで伸びてきた。ベトナム電子工業会(VEIA)によると、今年上半期の電子機器・部品の輸出額は414億3000万ドル。コロナ禍でありながら前年比6.2%増。
VEIAのドゥ・トゥイー・ホン専務理事は、パンデミックがベトナムによる電子工業への影響は今年上半期最小限にとどまった。しかし下半期になるほど部品調達は困難になり、ベトナムの電子業界は苦しくなっている、と語る。
ベトナム企業への供給元の中国や韓国がパンデミックで大きな打撃を受けたためだ。
「成長を謳歌(おうか)したベトナムの電子工業だが、下半期から下降の気配が濃厚、来年はもっと下降する」(ホン専務理事)見通し。
ホン専務理事によると、ベトナムの電子工業輸出額は年平均15-20%のペースで成長してきた。しかし落ち込みの兆候は既に出ており、回復はコロナ対策のワクチンが出回る21年第4四半期という。
サプライチェーンへの打撃は特にベトナムの中小企業に痛手。サムスン電子のベトナム子会社などは韓国政府からの支援もあったようだが、ベトナム資本の中小企業には政府の支援も薄く、大打撃という。
ベトナムでは携帯電話の生産が活発だが、今年世界の携帯電話需要は15-20%減の見込みとホン専務理事。民生電子や白物家電も10-15%落ち込むというのがホン専務理事の予測だ。中国に代わる〝世界の工場〟ベトナムにとってコロナは明らかにマイナス材料。
一方でコロナを機にベトナムの消費者行動も一変。「低価格だが信頼性高い」商品を求める傾向にあるという。
そこでベトナム製品の出番が来るというわけだ。優秀な工場労働者による製品はベトナムの産業の将来を支えると、ホン専務理事は期待を寄せる。
ベトナム政府はコロナの影響を受けた企業や個人を支援するため27億ドル相当の救済策を発表している。こうした資金を活用して外国からの投資を呼び寄せ、同時に消費を喚起させたいとVEIAは期待する。
グローバル企業が〝世界の生産拠点ベトナム〟という認識を維持するためにも、早期回復をホン専務理事は望んでいる。