2020.11.19 【IoTを支える無線技術特集】ルネサスと米アルトランUWBウエアラブルプラットフォーム開発

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【はじめに】

 新型コロナウイルス感染症の拡大は人々の生活を一変させた。いまだ収束が見えない中ではあるものの、人々は安全な距離を保ちながら職場、学校、社会に戻りたいと願っている。

 ルネサスエレクトロニクスとエンジニアリング、R&Dサービスのグローバルリーダーである米アルトランはこのほど、超広帯域無線通信(Ultra Wide Band:UWB)を使用したソーシャルディスタンス測定用のウエアラブルプラットフォームの開発で協業すると発表した。

 ルネサスはマイコンのロードマップを拡充するため20年2月にセキュアなUWBの低消費電力チップを専門とするファブレス半導体企業である3dbAccessからUWB技術のライセンス供与を受けることを発表しており、その技術を使用している。

【UWBチップセット】

 ウエアラブルプラットフォームに使用するUWBチップセットは、静電容量方式のタッチキー機能を搭載した「Renesas Synergy S128MCU」とdbAccessからライセンスを取得したセキュアな測距用UWB技術を組み合わせたもの。Bluetooth Low Energyなどの技術を使用した他のソーシャルディスタンスウエアラブル機器とは異なりLRP(Low Rate Pulse)に対応したルネサスのUWBチップセットは10倍の低消費電力で動作し、10cm以下の精度で距離を測定できるため、ソーシャルディスタンスの維持に必要な精度を実現する。試作中のリストウオッチはユーザーが安全な距離を設定可能であり、安全な距離より近づくとLEDと振動でユーザーに警告を与える。ルネサスは測距用UWBチップセットのサンプル提供を21年後半に開始する予定。

【アルトランとの協業】

 アルトランは共同開発者およびシステムインテグレータとして、UWBベースのプラットフォームなどを活用して幅広い市場の顧客に向けて、ソーシャルディスタンス確保のためのさらなるウエアラブルソリューションや関連する位置情報ベースのアプリケーションを開発していく。ソーシャルディスタンスを保つために試作したリストウオッチは、アルトランのイノベーションラボで展示される予定。

【最後に】

 ルネサスは今回の協業によりUWBによるソーシャルディスタンスの測距ソリューションを開発することにより、新型コロナウイルスの感染拡大防止に貢献する。業界初となるLRP UWBベースのソーシャルディスタンス測定用リストウオッチが市場に投入されることを目標に協力していく。同ソリューションを用いた応用事例は幅広く、感染症予防のみならず、入退室管理、アセットトラッキング、ジオフェンシングなどへの応用が想定されている。

アルトランについて

 アルトランはエンジニアリングとR&Dサービスの世界的リーダー企業。顧客の変革とイノベーションの課題に対応するため、独自の価値提案を提供している。同社はコンセプトから製品化に至るまで、将来の製品やサービスを開発するためにクライアントをサポートしており、自動車、航空、宇宙、防衛&海軍、鉄道、インフラ&運輸、エネルギー、産業&コンシューマ、ライフサイエンス、通信、半導体&エレクトロニクス、など35年以上にわたり多くの分野の主要企業と協力してきた。