2020.12.21 富士通、ろう学校などに無償公開「Ontenna」プログラミング教育環境

Ontenna無償公開説明会の模様。前列中央左の梶原理事ら

Ontennaを紹介する本多プロジェクトリーダーOntennaを紹介する本多プロジェクトリーダー

プログラミング後の子どもたちの様子プログラミング後の子どもたちの様子

 富士通は、音を体で感じる「Ontenna(オンテナ)」のプログラミング教育環境の無償公開を開始した。全国のろう学校をはじめとした小学生向け体験型プログラミング学習を提供していく。

 オンテナは、音の大きさをリアルタイムに振動と光の強さに変換し、伝達するユーザーインターフェイス。これを髪の毛や耳たぶ、襟元や袖口などにつけると、リズムやパターン、大きさといった音の特徴を感じることができる。

 同社では、ろう者に音を届けることを目的に、ろう学校の教育現場をはじめ、スポーツ観戦やコンサート、タップダンス鑑賞など、様々な環境での実証やろう者との協働研究を経て、19年8月から提供している。

 また、19年6月からは、ICTを使った社会課題の解決の一環として、オンテナの体験版をろう学校に無償提供している。「全国の7割のろう学校で、発話やリズム練習の事業や学校生活などで広く活用されている」と、オンテナの本多達也プロジェクトリーダー(戦略企画本部事業企画部)は話す。

 今回、こうした活動を進化させるため、オンテナのプログラミング教育環境の無償公開に踏み切った。これにより、子どもたちがこのプログラミングを活用して、自分の聞きたい音に対してオンテナの振動や光をカスタマイズすることが可能になった。例えば、「大きな音が鳴ったときに3回振動する」「小さな音をキャッチすると赤く光る」といったことができる。「子どもたちにプログラミング学習の機会を提供、ICTを上手に活用し、自分の課題を解決するなど、生活を豊かにする体験につなげたい」と本多プロジェクトリーダー。

 また、全国のろう学校や教育機関での活用を目指して、プログラミング機能の指導教材も、ろう学校の先生と協力して作成した。教育指導者へは、教育指導案・授業用スライド・ワークシートなどを提供することで授業での活用を支援し、全国のろう学校や普通学校に対してプログラミング教育の普及を目指していく考え。

 このプログラミング教育環境は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究領域として、筑波大学准教授の落合陽一氏が代表を務める超AI基盤に基づく空間視聴触覚技術の社会実装に取り組むxDiversity(クロスダイバーシティ)の支援を受けて開発した。

 このほど行われた、オンラインによるオンテナのプログラミング教育環境の無償公開説明会で、梶原ゆみ子理事(産官学連携推進担当ほか)が「イノベーションによって社会に貢献、ビジネスを通じてSDGsに貢献していく」など、同社のパーパスやダイバーシティへの取り組みについて語っていた。

 同説明会に登壇した落合准教授は「人の多様性をAIによって拡張していける」と、AIの可能性を強調していた。

 オンテナプロジェクトでは今後、チャイムの音や赤ちゃんの泣き声といった、特定の音に反応するプログラミング機能の開発も目指していく。