2021.06.29 【複合機・プリンターソリューション特集】働き方改革/DXソリューションポストコロナ時代を見据え安心・安全な環境構築へ
複合機は環境性能も重視されている
複合機各社が、クラウドサービスと連携し、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)や働き方改革などニューノーマ(新しい日常)にフォーカスしたソリューションを強化している。長期化する新型コロナウイルスの影響は、テレワークの急速な浸透など環境を大きく変えた。ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、〝いつでも、どこでも働ける環境〟が求められると同時に、安心・安全なネットワーク環境が必須。また、紙の電子化など今後本格化が期待されている。
イベントが盛況
4月に新発足した富士フイルムビジネスイノベーションジャパンは、コロナ禍の中で、万全のセキュリティー対策を取って、新体制のお披露目も兼ねて10月まで全国主要7都市でリアルなフェア「Bridge for Innovation 2021」の開催に踏み切った。6月に仙台を皮切りに開催したが、今後、大阪、東京、名古屋、広島、札幌、福岡の順に開催していく予定。
「イベントは、密を避けるため、講演および展示見学は全て事前申し込み制にし、展示会場の人数や展示見学時間を制限するなど、コロナ対策を徹底して行った。これまでになくコミュニケーションが取れ、参加者からの評判も上々だった」と同社の宮山晶一販売推進部販売促進室長は話す。
ポストコロナ時代を見据えたDX事例を中心に、働き方改革に向けたデジタルシフト、セキュリティーマネージメントなどの講演テーマも好評だったが、展示内容は、さまざまな経営・業務課題を解決するソリューションをニューブランド商品と共に紹介した。
富士フイルムビジネスイノベーションは、デザインを一新し、セキュリティー機能を強化したデジタルカラー複合機およびプリンターの新ブランド「Apeos(アペオス)」シリーズを4月から順次発売を開始している。使い勝手向上と大幅なセキュリティー強化を図った。同社は、複合機とソリューション連携を強化している。
紙の電子化などが注目されているが、電子文書と紙文書を一元管理するドキュメントハンドリング・ソフトウエア「DocuWorks(ドキュワークス)」と連携したソリューションを強化している。
働き方改革では、全国のセブン-イレブン店頭に設置されたマルチコピー機を利用した「ネットプリントサービス」、安全・快適にテレワークが行える個室型ワークスペース「CocoDeskを(ココデスク)」の利用も増加している。
リコーは、ニューノーマル時代の顧客への価値提供として「エンパワーリング デジタル ワークプレイス(EDW)」を中心とした施策を強化、顧客のDXを支援するサービスの提供に力を入れている。
EDWは、働く現場のDXを支援するため、顧客の業務効率化や生産性向上を目指している。ワークプレイスのITインフラを構築し、ワークフローをデジタル化してつなぐことで、新しい働き方の変革に貢献している。EDWとストレージによるデータ管理、文書管理、セキュリティー、紙の電子化などソリューションを拡充している。
中小企業の業務改革を実現するパッケージソリューションとしての「スクラムパッケージ」は、2017年10月発売以来、累計販売本数も14万本を突破している。中堅企業向けのSEがカスタマイズして提案する「スクラムアセット」も好評だ。
キヤノンマーケティングジャパンは、ニューノーマルのワークスタイルに貢献するトータルプリンティングサービスを強化している。また、ITソリューションと連動するデバイス戦略を強化、シナジー効果を高めている。センターオフィス、サテライトオフィス、ホームをクラウドで連携、場所を選ばないドキュメントの活用を支援する。
中小企業向けには、IT保守・運用を行う中小オフィス向けIT支援サービス「HOME」を提供している。20年の契約件数約11万件を23年には約16万件に持っていく計画。
同社はオービックビジネスコンサルタント(OBC)と提携。キヤノンのクラウド型MFP機能拡張プラットフォーム「uniFLOW Online」を介して、オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE DX」シリーズとOBCの財務会計システム「勘定奉行クラウド」との連携、提供を開始した。
今回の連携で、一括スキャンした複数の領収書から、金額や日付を高精度のOCR(光学文字認識)で抽出し、「勘定奉行クラウド」へ自動入力することを可能にした。手書き文字の読み取りも高精度で行えるため、精算時の転記負荷が軽減される。
文教市場に展開
エプソン販売は、プリントやコピーの使用状況に合わせてプランや機器を選べる「スマートチャージ」に力を入れている。文教市場を対象に「アカデミックプラン」を展開し、好評だ。先生方の働き方改革を支援するとともに、生徒の学びの向上などが評価されている。
この文教市場に加えて、医療現場へのスマートチャージを展開、病院など医療現場の課題に応えている。
スマートチャージの販売施策として、文教市場を対象にしたアカデミックプランを19年度から展開しているが、20年度もGIGAスクールも追い風となり、前年度比倍増ペースで販売を大きく伸ばしている。同プランは、ほぼ全都道府県で導入が進んでいる。
今後についても「文教や医療分野などへの紙の価値の訴求とともに、コロナ下でペーパーレス化が進むオフィスについても、働き方改革、環境面などお客さまに寄り添った提案に力を入れていきたい」としている。
コニカミノルタは、新ビジョンステートメント「Imaging to the People」をもとに、「as a Service(アズ ア サービス)」モデルで顧客価値を提供していく。昨年11月からは画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」の提供を開始した。
コニカミノルタジャパンでは、自社実践による働き方改革「いいじかん設計」サービスに注力するとともに、複合機とサーバーを統合した「Workplace Hub Smart(ワークプレイス ハブ スマート)」を本格展開している。先ごろマイクロソフトと企業のDXで連携した。
東芝テックは、複合機とクラウドサービスとの連携やスキャン機能、OCR機能を強化している。各種クラウドサービスと連携し、複合機から直接スキャンデータのアップデートや、データのプリントアウトを可能にしている。同社は「紙のデータ化とRPAを活用した自動化などを提案、生産性の向上」を提案している。
紙の電子化に注目、自社導入開始でノウハウ蓄積
国のデジタル化政策の推進とともに、今後、注目されてくるのが契約書など紙の電子化。各社がソリューションを強化している。
富士フイルムビジネスイノベーションは、お客との契約書などを対象に、DocuSignの電子署名サービスの自社導入を開始。今後、国内最大となる年間50万契約、3年間150万契約の規模で電子署名の活用を推進する。この自社における活用ノウハウを生かし、コロナ禍において社会課題となっている押印処理の非効率性を解消することでお客のDXを強力に推進する。同社はDocuSign、Adobe Sign、クラウドサインの三つの電子サインに注力する。
リコージャパンも、お客との契約に関する一連の業務を電子化するシステムをこの2月から全国支社で開始した。営業活動の効率化と非対面での契約によるニューノーマル対応を実現するともに、この実践ノウハウをお客にも提供していく。2021年度以降は、注文書や保守契約書などそのほかの契約書についても順次拡大。年間100万件を超える契約業務を電子契約に置き換えていく計画だ。
契約業務の電子化では、法律や人事管理などの専門企業との連携も増えている。
キヤノンマーケティングジャパンでは、弁護士ドットコムのWeb完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」を中核とした「契約業務支援サービス」の提供を20年12月から開始。キヤノンMJでは「契約業務の検討など前工程から契約書の保管まで契約業務プロセスをデジタル化し、BPOサービスにも対応している」点を他社との差別化に挙げる。
このほか、コニカミノルタジャパンは、人事労務管理業務をチャットでワンストップで提供する社会労務法人のTRIPORTと、エプソン販売は会計事務所と連携、中小企業の経営力強化や地域創生につなげる取り組みを強化している。