2025.07.11 次世代電池「リチウム硫黄」 開発競争が激化、欧州で新組織発足
欧州でリチウム硫黄電池研究の組織「TALISSMAN」が誕生
欧州4カ国、9つの企業・研究機関の組織「TALISSMAN(タリスマン)」が発足し、リチウム硫黄(Li-S)電池の開発に向けて取り組むことになった。欧州では英国もコンソーシアムを作り開発に動き出している。米国でも「バッテリー500」など複数のプロジェクトが進行中で、リチウム硫黄電池の開発が世界で活発になってきた。
欧州連合(EU)は今回、490万ユーロ(約8億5000万円)を助成し、次世代電池の開発を支援することになった。
リチウム硫黄電池は、1キログラム当たり400Whやそれ以上のエネルギー密度が期待され、従来のリチウムイオン電池の2倍のエネルギーとなる。EV(電気自動車)に搭載されれば、電池の重量半減も夢ではないとされる。
新組織であるタリスマンは、「安全性と持続可能なモビリティーへの応用に向けた先進的リチウム硫黄電池技術」の英語の頭文字が由来。EUの研究と革新プログラム「Horizon Europe」の一環として助成を受ける。
エアバスや電池メーカーのサフト、材料メーカーのアルケマなどのほか、フラウンホーファー研究所、トリノ工科大学など、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアの4カ国から9つの民間・公的研究機関が参加。スペインのサンセバスチャンで2日間のキックオフ会合を開き、プロジェクトがスタートした。
プロジェクトは車載、航空機、重機向けの電池利用を目指し、4つの項目ごとに目標を定めた。①1キログラム当たり最高550Whのエネルギー密度と700回の充放電サイクル達成②不燃性の半固体と全固体電解質による電池の安全性確保③2030年までにkWhあたり75ユーロ以下に削減④リサイクルなど環境に配慮したデザイン――などだ。
欧州では英国ファラデー研究所が推進するリチウム硫黄電池プロジェクト「LiSTAR」が始動。米国では「バッテリー500」や「PROPEL‐1K」などが進行中だ。リチウム硫黄を含めた次世代電池の開発競争が激化している。