2021.07.09 【家電流通総合特集】地域店のIoT家電と社会貢献への取り組み
ナルデンではスマホ教室で顧客のITスキルを高める
街の電器店は地域での存在感が高まる中、社業だけでなく社会貢献、地域貢献につながる活動にも注力している。一方、インターネットにつながる家電が増えていることから、高齢者と、ネットにつながる家電のパイプ役としても健闘。高齢化が進んでおり、地域への貢献と情報格差の解消に電器店が活躍している。
IoT家電
店頭実演や顧客ITスキル向上へ
テレビやレコーダーだけでなく、最近では白物家電にもIoT機能が搭載されるようになった。販売店もIoT家電を提案しようと、店頭実演や顧客のITスキルの向上などに取り組むところが増加。顧客の生活に合わせた使い方を紹介している。
シャープ系の中川無線(三重県四日市市、中川美光社長)は、グーグルアシスタント機能を搭載したハイエンドモデルテレビの販売に注力。店内の一角に、8K液晶テレビと4K有機ELテレビを同時に比較視聴できるコーナーを展開している。
テレビの購入を検討しているお客をコーナーまで案内すると、中川桂一専務が「オッケーグーグル、YouTubeをつけて」とテレビに向かって発声。AQUOSテレビのフラッグシップモデルに搭載されたグーグルアシスタント機能の実演をしつつ、お客に体験視聴を促す試みだ。
既に自宅のテレビでインターネットを使用しているお客からも「検索ワードをいちいちリモコンで打ち込む煩わしさがない」と良い反応が返ってくるという。
8K液晶・4K有機EL比較視聴では、映画鑑賞や自然鑑賞など、お客の趣味嗜好(しこう)に合わせたテレビ選びを体験的に提案。桂一専務は「お客さまに良い商品を買っていただくからには、商品の性能を余すところなく堪能し、満足していただきたい」と意気込みを語った。
パナソニックショップのでんきのアズ八女店(福岡県八女市、弥永賢伸店長)では視聴を通じてインターネット対応テレビの魅力を伝え、販売につなげている。動画配信サービスでさまざまなコンテンツを楽しんでもらうだけでなく、顧客のアカウント作成も手助けしている。
「動画配信サービスしか見ないというお客さまも多い」と弥永店長。発色が鮮やかな有機ELテレビで夜景動画を映しながらの「宅飲み」など、ネット対応テレビならではの楽しみ方を提案する。
高性能なスピーカーを生かし、テレビを音楽プレーヤーとして使うことも提案。YouTubeにはハワイアンミュージックなどのBGMが流れる動画も多く、気分転換として勧めている。
ブルーレイ・DVDレコーダー「DIGA」の購入客には、スマートフォンアプリ「どこでもディーガ」を紹介する。外出中でも番組表の閲覧や録画が可能なほか、録画した番組をスマホなどで視聴できる。海外でも日本の番組を楽しむことができ、イギリスに長期滞在中の顧客から好評だったという。
シャープ系のナルデン(和歌山市、成瀬静夫社長)は、店内で顧客向けのスマホ教室を実施している。スマホの使い方をはじめLINEの活用方法などを指導。携帯電話運営会社と連携し、携帯電話店のスタッフが講師となって進行する。
成瀬裕之店長は「家電やスマートフォンはWi-Fiにつながる。インターネット回線のサポートもできれば顧客を囲い込むことができる。顧客のWi-Fiの構築やスマホの使用環境を整えてIoT家電の普及を進める」と話す。
会場として店舗2階のコミュニティースペースを活用。スマートフォン教室は、顧客の困り事対応がきっかけとなって生まれたものだ。「顧客から『スマートフォンに買い替えたが使い方が分からないので教えて』と問い合わせが多々あった」と成瀬店長。
教室の定員は各回10人だが、毎回満員になる。参加料は500円。マンツーマン指導が基本で、リピーターも多い。IoT家電につながるスマホのサポートを実施して、提案できる土壌をつくっていく。
社会貢献
寄贈やイベント設備運営など多岐
社会貢献は、企業の大小を問わず、地域活動における重要な取り組みだ。地域で活躍する電器店ではその重要度が増している。活動範囲は幅広く、モノの寄贈やイベントでの設備運営など、多岐にわたる。
パナソニック系のあい電ダイワ・一番館店(山形県酒田市)では2007年から毎年、地域貢献活動の一環として店舗近くの小学校へ本を寄贈している。
斎藤哲男会長は社長就任当時から、尊敬するパナソニックの松下幸之助創業者や山形パナソニックの清野源太郎創業者が実行してきた、利益の一部で地域に貢献する考え方に共鳴。地域で会社を経営する立場として、利益の一部で地域貢献をしたいと考えていた。
どのような地域貢献が可能か考え抜いた末、子どもたちへの教育支援がいいと思い、小学校への本の寄贈を決めた。
酒田市立泉小学校へ毎年、30万円分の本を寄贈する。学校では「ダイワ・一番館文庫」を設けている。それとは別に新1年生へ絵本のプレゼントも行っている。例年は入学式で絵本を贈呈するが、昨年と今年は新型コロナウイルス感染防止のため、入学式での贈呈は行えなかった。
斎藤会長は「1年生と6年生では読む本が違ってくる。それに対応するためには相当の冊数が必要になる。長期間継続していきたい」と述べている。
北辰映電(広島市中区)は毎年、「広島原爆の日・平和記念式典」のPA設備を担当している。
営業GP営業部営業課の大前智昭係長は式典同設備の総責任者になって4年。入社してから25年目を迎え、これまで営業畑を歩いてきた。毎年8月6日は同社にとって、特に営業・工事担当者にとっては総決算的な業務に位置付けられる。「責任者になる前から仕事の重み、やりがいはひしひしと感じていたが、責任者になるとその重みがまるで違う」と大前係長は話す。
自分たちが担った仕事がテレビ、インターネットを通じて全世界に配信される。実際の工事は8月1日から式典当日までの6日間だが、責任者の仕事は市とのさまざまな打ち合わせから始まり、社内の担当の調整など難解な仕事が山積みだという。「市役所の要望に応え、社内の調整など人間関係が特に難しい」(大前係長)。
昨年はコロナ禍により、初めてLEDプロジェクターでメッセージを配信した。
栄電気(東京都江東区)の沼澤栄一社長は、地域店の経営・運営のほか、保護司としても活動している。保護司は、保護観察官と協力し、犯罪や非行をした人に対して更生を図るための指導や助言をする。任期は2年。
約2年前、お客から推薦されたことをきっかけに保護司の活動を始めた。「責任の重い仕事だが、大切な地域貢献だと思う」と沼澤社長は語る。地域店の活動範囲を決めることなく、広い視野でこれからも地域貢献を行っていく。