2021.07.16 【電子部品技術総合特集】研究開発の取り組みトーキン・及川英彦研究開発本部長
及川 本部長
車載用途ターゲット 高周波・高耐熱要求に対応
トーキンの研究開発体制は、マグネティック・センサ&アクチュエータ(MSA事業本部)関連の材料開発を研究開発本部(仙台)で行い、キャパシタ事業部のタンタルキャパシター、スーパーキャパシター(電気二重層)関係の研究開発はキャパシタ事業部(富山)で継続実施している。親会社の米KEMET社が昨年から台湾YAGEO社の傘下となり、組織見直しを実施しているが、トーキンの開発体制は従前から変更していない。
仙台の研究開発本部では、MSA事業本部関連製品向けの材料・プロセスの新規案件を中心とした開発を実施。このほか、分析装置によるナノ分析、CAEを研究開発本部内の知的財産のグループが全社開発に対し横断的な活動を行う。
MSA事業本部への材料・プロセス開発について、及川英彦研究開発本部長は「従来は一般民生向けの開発を進めてきたが、現在は車載用途をターゲットに置き、『高耐熱化』『高周波化』『高効率化』をキーワードとした開発に力を注いでいる。パワー半導体のSiC化などに伴う、材料への高周波、高耐熱要求に対応した開発を進める」と話す。
車載は、特に自動車の電動化に照準を合わせた開発を強化。今年5月には、仙台で開発した材料をベースに、車載対応メタルコンポジット・パワーインダクターで使用温度上限を180度に高めた「MPEVシリーズ」を商品化した。
第5世代移動通信規格5G用は、通信量増大・通信速度の高速化に伴う高周波でのノイズ抑制や高効率化に対応する材料開発を強化。ノイズ抑制シート「EFSシリーズ」(バスタレイド)は10ギガヘルツレベル対応品を量産済みで、「今後は28ギガヘルツレベルなどをターゲットとした材料開発も進める」(及川本部長)。
AEC-Q200車載グレード、1000V対応、150度対応などの高耐熱フェライトコアを用いたチョークコイルのシリーズアップも計画する。
YAGEOグループ間での技術・開発に関するシナジーディスカッションも始めた。
同社が固有技術を有するフェライトやマグネットの領域は独自開発を行うが、新規材料領域では大学や公的研究機関と連携した開発を進めている。産学協働では、東北大学を中心とした各種プロジェクトに参画し、高周波帯域でのノイズ抑制材料や低損失材料の開発・基礎研究を行う。
同社は、社内の共通開発案件であるメタル関連のデータベース構築を開始しており、「今後はマテリアルインフォマティクスの活用を視野に入れたい」(及川本部長)。