2021.07.16 【電子部品技術総合特集】研究開発の取り組みニチコン・古矢勝彦執行役員NECST事業本部技師長
古矢 執行役員
社内外との連携強化、社会課題解決に取り組む
ニチコンは、06年に制定した「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりの貢献と、より良い地球環境の実現に努める」経営理念に沿って、コンデンサーと回路・電源応用機器のNECST事業の研究開発を加速する。
古矢勝彦執行役員NECST事業本部技師長は「ESG、SDGs、サステナビリティーの観点から世の中が大きく変化する中で、当社の経営理念にはこれらを全て掲げ、考働することを宣言している。2010年にNECST事業本部を発足させ経営理念を実践するために社内外と連携して社会課題の解決に取り組んできた。
NECST発足当時の予測よりかなり早く社会は変化しているが、変化を先取りする形で社会の要請に応えることができている。自社での研究開発に加え、産学、産産、産官学の1対多のオープンイノベーションによる連携を強め顧客ニーズ、社会課題に対応していく」と話す。
先月のTECHNO-FRONTIER展で初公開。耐熱・機能性・特殊塗料メーカーのオキツモ、素材・材料専門商社KISCOと共同開発した赤外線波長を選択放射し、樹脂筐体内の熱源からの熱を樹脂筐体を透過させ外部に放熱する全く新しい放熱手法を用いたメタマテリアル放熱シートや、京都大学発スタートアップ企業のエネコートテクノロジーズ、リコー電子デバイスと共同開発し、試作に成功した世界初のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を採用したメンテナンスフリー電子棚札は、同社のコンデンサー技術との融合による開発成果だ。
NECSTでも住宅メーカー、太陽電池メーカー、電力会社、電装メーカー、自治体、研究機関と連携。家庭用蓄電システム、V2Hシステム、災害対策用分散型電源、がん粒子線治療施設用加速器電源などを製品化。バーチャルパワープラント(VPP)、公共・産業用蓄電システムなどの実証実験でも大きな成果を上げている。
05年に技術の共同開発、技術経営(MOT)で包括提携した立命館大学、16年にアルミ電解コンデンサー素材、NECST製品のネットワーク開発や人材育成で包括提携した東京大学生産技術研究所、電源用SiCモジュールを共同開発する京都大学・大阪大学、アルミ電解コンデンサーの電解液を共同開発する三重大学など大学との連携も強め社会実装、製品化につないでいる。
AI自動制御、気象警報&早期注意情報自動制御を家庭用蓄電システムに搭載するなど、最先端技術への対応にも取り組む。